キリンビバレッジ海老名物流センター

カーゴニュース 2025年6月26日 第5350号

物流施設 マテハン機器導入特集

キリングループ
自動ピッキングで作業負担を軽減

物流DXにより効率化と物流品質向上を実現

2025/06/25 16:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 マテハン DX・システム・新技術

 キリングループは労働力不足や物流の「2024年問題」など大きく変化する物流環境に対応し、デジタル化や自動化技術を活用した物流改善を推進している。飲料メーカーであるキリンビバレッジ(本社・東京都中野区、井上一弘社長)とグループの物流機能会社であるキリングループロジスティクス(本社・東京都中野区、小林信弥社長)が連携し、昨年12月に「海老名物流センター(神奈川県海老名市)」に自動ピッキングソリューションを導入し、従来は作業者が手作業で行っていたピッキング作業を自動化した。導入後約6ヵ月が経過した現在、計画どおり順調な稼働が続いている。下期に向けた稼働状況を検証しながら、将来的には他の物流センターでの導入も視野に入れる。

 

出荷効率を4割以上向上、本格導入を決定へ

ソリューションのフロー図

 キリンビバレッジの東日本エリアの物流拠点である海老名物流センター(キリングループロジスティクス湘南支店)は約2㎞離れたキリンビバレッジ湘南工場で生産した紅茶・緑茶・コーヒー・機能性飲料などの物流拠点として2010年に開設。キリングループロジスティクスの専用施設としてプロロジスが開発した施設で、建物は地上2階建て、延床面積は約3万5500㎡の大型拠点だ。同センターが導入したシステムは、三菱重工グループが開発した「ΣSynX(シグマシンクス)」により飲料倉庫のピッキング作業を自動化・知能化する自動ピッキングソリューション。これまでは作業者が効率化を考えながら行っていたピッキングを、ΣSynXによって自動化・知能化し、無人フォークリフト(AGF)、無人搬送車(AGV)、パレタイザーを効率的に連携させることで作業工程を自動化する。

パレタイザーが製品をパレットに積み付ける
ピッキングされた製品をAGVが搬送

自動化ソリューションは物流品質の向上にも貢献

 

 海老名物流センターを運営するキリングループロジスティクス東日本支社物流管理部湘南支店の木村恵利氏は「昨年末に導入、半年が経過したが、重筋作業などの身体的負担が軽減できている。また、並行して行う有人作業に対し急な人員の休みがあっても自動化ソリューションが稼働することで作業量を補完できる。日々の業務を円滑に実施していくためにも、自動化機器が大変役立っている」と報告し、自動化機器を活かしたセンター業務に自信を示す。

 

 自動ピッキングソリューションは人手による重筋作業が解消するだけでなく、物流品質の向上にもつながる。システムは出荷オーダーに従って稼働し、入出庫はAGF、積み付けはパレタイザーが行うため、作業者の手違いによる誤作業が発生する余地がない。誤出荷が発生しないため、人手による作業の場合に行っている製品と出荷作業指示書とを照合する検品作業が不要となる。DXが物流品質の向上に寄与するとともに省力化にも貢献する好事例だ。なお、物流品質について言えば、従来からキリングループロジスティクスは「誤積み・誤配」などの発生率に関して10ppm以下の水準を維持するなど他業界に勝る物流品質を保ち、物流企業として〝キリン品質〟を強みとしている。自動化技術を活用することで、さらなる品質向上に取り組んでいく考えだ。

 

 検品レスの実施に関して、湘南支店の鯨井大輔氏は「自動ピッキングした製品を積み付けたパレットには『自』の文字を印字したラベルを貼ってわかりやすく表示している」と説明し、「フォークリフトのオペレーターは、ラベルを見ると一目でこのパレットに積まれた製品は検品不要だということがわかる。1回ごとの検品レスは業務負担の軽減に役立ち、当センターは出荷量が多いため、少しずつでも積み重なると大きな時間削減につながる」と述べ、DXによる時短効果に言及する。

 

 DXについて同社物流部物流管理担当の渡邉良平氏は「物流品質の向上や業務効率化に有効であり、働きやすい環境づくりにもプラスとなる。来年4月には改正物流効率化法の荷主規制が施行され、物流改善が義務化される。物流DXをはじめとする様々な取り組みを全社的に進め、課題を乗り越えていく」と語る。同社は昨年10月に「物流DX推進室」を設立(25年3月28日付で物流DX推進部へ組織変更)したが、これもグループ横断的にサプライチェーンマネジメントのデジタル化や自動化を加速していく考えに基づく施策の一環だ。

 

自由度が高く、汎用性の高いシステムを運用

 

 海老名物流センターが導入した自動ピッキングソリューションは、コンベヤや自動倉庫のような大規模な固定設備は不要なシステムだ。AGF、AGV、パレタイザーは可動式であり、汎用性が高い機器であることから、今後の取扱量の増減や、それに伴う物流センターのレイアウト変更にも柔軟に対応しやすい利点がある。

 

 キリンビバレッジの庄司氏は他の物流センターでの水平展開も検討していくと明かす。「まずは海老名物流センターで十分な検証を行ったうえで、3年から5年程度のスパンで複数の物流拠点に導入することを検討していく」と述べ、「物流の担い手不足によって生じるサプライチェーン上のリスクを回避することは喫緊の課題だと認識している。持続可能で安定的な物流を構築するには、グループ各社が連携し、積極的に物流DXを推進することが必要だ」と強調する。

鯨井氏、木村氏、庄司氏、渡邉氏(左から)
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