カーゴニュース 2025年6月26日 第5350号
日本トランスシティ(本社・三重県四日市市、安藤仁社長)は昨年11月から、医療・介護用食品専用の物流センターを四日市市内で稼働させた。栄養療法食品の開発・製造・販売を手掛けるニュートリー(本社・三重県四日市市、袴田義輝社長)から物流センター業務を受託したもの。既存の倉庫を改修して様々なマテハン機器を導入し、「次世代型物流センター」にリニューアルしたモデルケースとしても注目される。
「人が行う作業」を厳選した自動化を実現
日本トランスシティの中期経営計画(2023~25年度)は、基本方針のひとつに「収益基盤の拡充によるトップラインの向上」を掲げ、「消費財物流の多様化および事業の再構築」、「新分野における物流取扱いの創出」に取り組んでいる。高齢化社会の進展とともに需要の拡大が見込まれる医療・介護用食品の物流分野に参入したのも、その一環だ。
ニュートリーは従来、東西に物流拠点を配置していたが、さらなる需要拡大への対応が課題となっていた。こうした状況を踏まえ、ニュートリーは今般トランシィが保有する四日市市河原田地区の倉庫を新たに活用し、物流体制を再編。出荷能力の拡大とともに、物流業務の効率化による製品の安定的な供給体制を目指した。
「貨物流通部南営業所河原田倉庫」(倉庫面積9200㎡)は、「省人化・省力化と業務の簡素化を推進し、生産性を確保できる次世代型物流センター」をコンセプトとし、医療・介護現場で使用される食品の搬送に適した様々なマテハン機器を導入。昨年11月18日から出荷を開始し、静岡県から沖縄県まで西日本広域をカバーする。
新センターのコンセプトの背景にあるのが、将来、深刻化が予想される労働力不足だ。倉庫内作業の従事者は確保しにくくなり、人件費の高騰も見込まれる。新センターではマテハン機器の導入により省人化・省力化を追求するとともに、「人が行う作業」を厳選し、熟練者に依存せず、繁忙期にも人を集めやすいオペレーション体制を目指した。
同センターで取り扱う製品の中には、農林水産省により基準が定められた「スマイルケア食」(栄養補助、咀嚼補助、嚥下食)も含まれ、嚙むことや飲み込むことが難しい人、栄養補給が必要な人に対する安定供給が使命だ。中部支社貨物流通部の森紳輔部長補佐は、「外装も含めて品質には細心の注意が必要で、納期も厳守が求められる」と話す。
自動倉庫×15台のSTVの活用で省人化
センター入荷時にトラックから降ろされた荷物は、フォークリフトオペレーターがまず検品し、商品とパレットが紐づけられた入荷ラベルを貼付する。1階の荷捌き場からトラックバースまで延長して配備されたコンベアは垂直搬送機と接続しており、コンベアにパレットを流すと自動で2階に搬送される。
2階ではSTV(ダイフク製)が15台稼働しており、1階から垂直搬送機により搬送されたパレットを引き取り、自動倉庫(ダイフク製)に格納。通常の倉庫では、垂直搬送機~保管エリアまでの搬送はフォークリフトオペレータが行うが、同センターではSTVの活用により大幅な省人化を実現している。
自動倉庫は3112パレットの収容が可能で、スタッカークレーンは17基。STVは空いているクレーンにパレットを順次格納していく。自動倉庫のWCS(倉庫制御システム)にて、棚ごとの在庫が自動的に管理されるため、事務所側でのロケーション入力作業等が不要となっている。
ピッキングステーションでラベルを貼付
出荷オーダーがかかると、自動倉庫からSTVで8ヵ所のピッキングステーションに商品ケースを載せたパレットが搬送される。17基のうちどのクレーンから搬出されても空いているステーションに搬出され、特定のピッキングステーションが混雑したり、作業者のアイドルタイムが発生することがない。
ピッキングステーションでは出荷ラベルが自動発行され、作業者はモニターに表示された指示個数をピッキングし、ラベルを貼付。作業完了ボタンを押し、ケースをソータに流す。2階から1階へは、かつて垂直搬送機のあった場所に設置されたスパイラルコンベア(AmbaFlex製)で1階に搬送される。
なお、オートラベラーを導入すればラベル貼付の自動化は可能だ。ただ、ピッキングステーションで商品の数を取り間違えてしまうと、「ラベルが貼られていない商品」が1階まで流れてしまう。このためラベル貼付は自動化せず、ピッキングステーションで「出荷ラベルの枚数分の商品に貼って流す」方式によりピッキングミスのリスクを減らしている。
スパイラルコンベアは1階のケース仕分ソータ(11シュート、設備能力4250ケース/h)に接続しており、方面別に仕分けされ、搬出口に押し出される。その際、後方の商品が前方の商品に衝突しないように制御し、箱の損傷などを回避。また、搬出タイミングを調整することで搬出口の混雑を防いでいる。
方面別仕分が終わった商品をパレットに積み付ける作業は、技術的にはロボットでも可能。ただ、現時点では人で行う方がスピード面でまさっているため、当面、人が作業を行う。一方、トラックバースの仮置き場までパレットを搬送する作業は、現状ハンドリフトで行っているが、将来的にはAGV(無人搬送車)に置き換えることも検討する。
1階に設置された、個人向けのEC貨物やサンプル品を扱うエリアでは棚搬送ロボットシステム(東芝製)を導入。保管スペースを節約できるほか、ステーションに棚が搬送されるため、商品を探す時間がなくなり、作業者の負担軽減につながる。また、1階には自動倉庫に格納できない商品用にネステナー保管エリアも設けている。
熟練者に頼らないオペレーション体制を構築
各種マテハン機器の導入により、省人化・省力化を実現するとともに、人が行う作業はできるだけ簡略にし、熟練者でなくてもできるオペレーション体制を整備。同じ規模・出荷量の倉庫でフォークリフトオペレーターが13人程度必要であるところを3人でまかなえている。繁忙期に他現場からの応援にも入りやすく、人材確保にも有効と見る。
なお、既存の倉庫を改修して自動化に取り組んだため、「どのようなマテハン機器であれば導入できるか」を検討するにあたって、「苦労もあった」と森氏は振り返る。2階は床荷重(1・5t/㎡)の制約があるため、自動倉庫としてより収容効率のよい「ダブルディープ式」を断念し、「シングルディープ式」を導入した。
今後はニュートリーの事業拡大に対応し、出荷能力の最大化に取り組むほか、同センターで保管しているチラシ類について倉庫内でのオンデマンド印刷の導入などさらなる効率化提案を検討。また、ニュートリーでは東日本エリアでもトランシィの倉庫に物流拠点を集約しており、蓄積されたノウハウの水平展開を目指す。
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