カーゴニュース 2025年9月4日 第5368号
オンライン特別編集「10月8日」は通関業の日
AIを活用して通関業務の効率化を図るためのソリューションが続々と登場している。このほど物流大手のフェデラル エクスプレス コーポレーション(フェデックス)がアジア太平洋地域で企業や個人向けにAIを搭載した通関手続き支援ツールを提供すると発表。通関業務におけるAIの活用は、AI―OCRによる書類の自動読み取り、情報の抽出・転記にとどまらず、通関士の判断支援など専門領域にも拡大しつつある。
書類作成をサポート、税番の候補と根拠を提示
フェデックスが導入した「Customs AI」は通関書類作成をスマート化する生成AI搭載のチャットボット。顧客が入力した情報をリアルタイムで分析し、適切な品目説明と対応するHSコード(国際統一商品分類)を自動生成し、ワンクリックで出荷書類に反映する。
提案された各HSコードには、公式の米国HTS関税表へのリンクも含まれており、内容の確認や正確性の検証をサポート。現在、オーストラリア、グアム、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、フィリピンで利用可能となっている。
また、「HTSコード検索機能」は、米国への輸入通関に必要な正確なHTSコードを特定する作業を簡素化。顧客が品目の説明を入力すると、システムが自動的に最も適切なHTSコードを信頼度スコアとともに提案する。
日本電気(NEC)は6月から、生成AIを活用して輸出入統計品目番号(税番)の特定を支援するサービス「AI税番判定サポート」を提供開始した。経験や知識によらず高い精度で税番を特定できるようになり、部門や企業間の情報確認の回数を減らせる。
税番を知りたい品目の名称やHSコードなどをシステムに入力すると、LLM(大規模言語モデル)が入力された情報をもとに解釈・分析し、独自のロジックを用いて情報を厳選。そのうえで、税番の候補と根拠を提示する。
情報が不足している場合は、追加で入力すべき情報の候補が提示され、その指示に従って追加情報を入れることで、税番の候補と根拠が提示される。LLMを活用することで、税番が規定されている関税率表解説を理解して回答し、高い精度で税番を特定できる。
生成AI技術に特化したソリューションを提供するジュリオでは、「通関AIシリーズ」として「通関AI―OCR」、「HSコード識別AI」、「関税申告書レビューAI」をラインナップしている。
「HSコード識別AI」では、選定したHSコードの根拠やプロセスを可視化し、税関や監査への説明責任を果たせるようになっている。また、過去の申告履歴や類似製品の情報を活用し、一貫性のあるHSコード選定を支援する。
「関税申告書レビューAI」では、インボイスやパッキングリストなど複数の関連書類間での情報の一貫性を自動的に確認し、不一致や矛盾を検出。関税法規や輸出入要件に基づき、書類内容が最新の規制に適合しているかをチェックできる。
誤申告が想定される取引を抽出
デロイト トーマツ グループは、企業の税関申告におけるリスクの分析を、AIを活用して支援するサービスの提供を開始。輸入申告を行った企業は、税関申告時に誤りがないかリスクの分析を効率的に行うことができ、税関による追徴課税のリスクを低減する。
企業が保有する税関への申告データ、関税関係書類、海外送金や経理関係書類のデータを異常検知システムに取り込み、申告誤りが想定される取引を、項目別に抽出・スコアリングし、一覧化する。
複数のリスクスコアを統合する独自のアルゴリズムを活用。企業は、このリスク分析の結果をもとに追徴リスクを定期的に確認し、リスクのある取引内容を精査することで、自主的な修正申告の検討・実施が可能になる。
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