カーゴニュース 2025年9月18日 第5372号
オンライン特別編集「10月8日」は通関業の日
「アドバイザー」業務で新たな価値の創出が可能に
――「進むべき方向性」というのは、具体的には「コンサルティング能力を備えた通関士への進化」ということでしょうか。「EPA関税認定アドバイザー制度」創設のきっかけとなった、財務省の「EPA有識者勉強会」報告書でも、通関士のコンサルタンシーの向上が提言されています。
岡藤 この勉強会には通関業界からも参加し、業界の現状を説明しました。財務省としては、荷主がEPAに対する理解を深め、EPAを活用した貿易が拡大することを目指しています。ただ、荷主の多くでは、EPAの利用に必要な関税分類や原産地規則に関する専門知識を持つ人材が不足しています。つまり外部専門家による支援が必要です。勉強会では、日常的に関税に接している通関士が、この外部専門家としての役割を担えるのではないかという意見が多く出されました。その結果、報告書では、民間で唯一の関税の専門家である通関士が、荷主のEPA活用を支援するアドバイザーとして活動してほしいということが示されました。
従来、「非違・誤謬を出さないこと」が優先され、適正かつ迅速な業務処理が通関士の評価の基準になっていましたが、「アドバイザー」という新しい領域の業務が追加されることにより新たな価値の創出が可能と考えています。また、コンサルやアドバイザー業務を通じ、会社の経営に貢献できれば、通関士の地位の向上につながります。「EPA関税認定アドバイザー制度」は財務省の後援も実現し、国も後押ししてくれています。この制度を活用することが、通関士にとって将来のあるべき姿に近づくための大きなチャンスになると考えています。
――通関士がコンサル、アドバイザー業務でその力を発揮していくには、経営者の理解や会社のサポートも必要になりますね。
岡藤 連合会としては、通関士をアドバイザーとして認定する制度を提供しましたので、それをビジネスにどう活かしていくかは、それぞれの会社で考えていただくことになります。従来から、企業規模が大きければ大きいほど、通関部門が他の部門から独立し、通関士と荷主が接する機会はほとんどありません。通関士がその専門性を活かし、荷主のアドバイザーとして、EPAの活用をはじめ貿易に役立つ情報を提供し、助言を行うことで会社としてのビジネス拡大につなげる、こうした道を切り開くのが、「EPA関税認定アドバイザー」だと思っています。
通関業務料金の価格転嫁、荷主に理解を訴え
――コンサル、アドバイザーといった通関士の高度な業務には当然、適切な対価が求められます。このあたりについて荷主の理解がまだ十分でないように感じます。通関業務料金についても価格転嫁が進んでいないとの声も聞きます。
岡藤 17年10月8日の通関業法改正により、通関業務料金の上限が撤廃され、料金は完全自由化されました。ただ、昨今、急激に人件費等が上昇しているにもかかわらず、通関業務料金への価格転嫁が行われていないという現状については、昨年、名古屋通関業会が行ったアンケートの結果でも明らかとなりました。
昨年9月に開催した、関税局長と地区業会会長・理事長との意見交換会でこのアンケート結果を報告しました。その後、12月に関税局業務課から日本貿易会宛てに「荷主と物流業者との取引の公正化に向けた 通関業者との取引に関する一層の配慮等について」と題した文書による協力要請が行われました。
いったん自由化された通関業務料金を再度見直すことは非常に困難です。会員各社が荷主に対し値上げ交渉を行う中で、優越的地位の濫用に該当する事例があった場合には、連合会に報告していただくようお願いしているところです。また、そのような報告があった場合には、公正取引委員会へ対応をお願いしたいと思っています。
公正取引委員会では、かねてより関税・消費税の立替払いという業界特有の商慣習に関心と理解を示してくれているところですが、基本は、通関業が国民生活の維持に欠かすことのできない重要インフラであることを荷主のみならず、国民に理解を求めていくことが重要と考えています。
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