物流業界でM&Aが活発化 成長戦略の有力な選択肢に

レポート/国際物流M&A最新動向
大型M&Aは一巡か?

機能・エリア強化が加速

2023/03/14 06:00
全文公開記事 M&A グローバル物流

 国際物流業界では、大手船社やメガフォワーダーなどによるM&Aが引き続き旺盛だ。2021年はDSVパナルピナ(デンマーク)による中東物流大手アジリティの一般貨物部門の買収など大型案件があったが、続く22年は件数こそ多かったものの比較的小規模なM&Aが多かったようだ。傾向としては、大手船社が豊富な資金力をバックに周辺物流分野を買収したり、特定エリアを強化する一環でM&Aを実行するケースも目立った。また、大手フォワーダーや3PLなどが低温やヘルスケアなど特定機能に強みを持つ会社を傘下に収める動きも散見された。


19~21年は大型M&Aが加速

 

 まず、ここ数年の国際物流における大型M&Aを振り返ると、19年に大手フォワーダーのDSVが同業のパナルピナを買収。同年には大手船社CMACGM(フランス)が大手フォワーダーのシーバロジスティクスを傘下に収めるという大型案件があった。

 

 21年にはDSVパナルピナのアジリティ買収に加え、キューネ&ナーゲル(スイス)が中国系航空フォワーダーであるAPEXインターナショナルを買収。また、大手船社マースク(デンマーク)が香港の3PL大手であるLFロジスティスを、さらに、中国のエクスプレス大手であるSFエクスプレスが香港の物流大手ケリーロジスティクスを買収するという大型案件が続出した。背景には、高騰した海上運賃による莫大な収益を得た大手船社やメガフォワーダーが、その振り向け先としてM&Aを加速させたことがあるようだ。


 エリア・機能補完で小規模M&Aが頻出

 

 22年に入っても大手船社などの投資意欲は健在。ただ、「大型M&Aが一巡したことで、適切なサイズの出物が少なくなった」(関係者)という。そこで、大手船社やメガフォワーダーなどが、エリアや機能などを補完すべく比較的小規模なM&Aを実施したというのが大まかなトレンドだ。

 

 大手船社ではCMA‐CGMが積極的な動きを見せる。フランスのラストワンマイル配送会社コリ・プリヴェ、同じくフランスの完成車物流大手GEFCOを相次いで買収したほか、米国のニューヨーク/ニュージャージー港のターミナル運営会社2社をグループ化した。ハパックロイド(ドイツ)は港湾ターミナルへの出資を加速。イタリアで港湾ターミナルなどを運営するスピネリに出資したほか、インドの港湾ターミナル会社やチリの港湾ターミナル会社にも出資。また、アフリカ航路専業のDALからコンテナ定期船事業を買収し、エリア戦略も強化した。大手船社ではこのほか、マースクがプロジェクト輸送に強みを持つ事業者を買収している。


 また、メガフォワーダーなど大手物流事業では、ドイツポストDHL(ドイツ)がドイツの液体物流大手のJFヒレブラント、DBシェンカー(ドイツ)が米国運送大手のUSAトラックを買収するなど、特定機能やエリアを補強する動きが見られる。分野別では医薬・ヘルスケア領域で、UPS(米国)がイタリアのボミ・グループを、DHLサプライチェーンがメキシコのヘルスケア大手NTAを買収した。低温物流では、リネージュ・ロジスティクスが同じく米国の同業であるMTCロジスティクス、カナダの低温物流大手ベルサコールドを相次いで傘下に収めた。 

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