カーゴニュース 2025年12月16日 第5396号
持続可能な物流の実現に向け、モーダルシフトの担い手としての期待が高まるJR貨物(本社・東京都港区、犬飼新社長)。環境面や労働生産性で高い競争力を有する一方で、鉄道シフトの障壁となっているのが多発する輸送障害の発生だ。台風や大雨など自然災害の発生が避けられないなかにあって、仮に輸送障害が起きた場合でも、いかに代替輸送手段を迅速に立ち上げられるか――。JR貨物が進めるBCP対策の〝現在地〟をレポートする。
Point1
官民一体のBCP対策会議を各地で推進
土砂流出などによって線路が寸断され、長期間の輸送障害が起きた場合、真っ先に手を打たなければならないのは、トラックや船舶によるコンテナ代行輸送手段の確保。その際、利用運送事業者の協力によりトラックが代行拠点駅に集められることになるが、そこで課題となるのが駐車場の不足だ。また、船舶代行を実施する場合でも、港湾関係者との調整などに時間を要するケースが少なくない。
そうした課題認識のもと、全国で進められているのが官民一体によるBCP対策会議。国や地方自治体、利用運送事業者などをメンバーに、JR貨物が単独では解決できないBCP上の課題について理解を求めるとともに、協力を依頼することを目的としている。
2023年度下期からスタートしたBCP対策会議の最初の開催場所となったのが山口地区。18年に発生した西日本豪雨災害で山陽線が100日間にわたって寸断され、大きな教訓を遺したエリアでもある。鉄道ロジスティクス本部鉄道統括部長の入江宏紀氏は「山陽線は重要な幹線でありながら、災害が起きた時に代替輸送力をつくることが難しく、ボトルネックになりやすいエリア。ちょうど新南陽駅の改良工事が始まったこともあり、最初の開催場所に選んだ」と語る。
すべてのBCP対策会議に共通するテーマは大きく3つに分けられる。一点目は、全国から集まる代行トラックの置き場となる駐車場の確保。二点目は、特殊車両通行許可など代行トラックの通行円滑化。そして三点目は、スムーズな船舶代行の立ち上げに向けた港湾荷役の円滑化。
このうち、駐車場の確保では、代行輸送の拠点となる駅周辺で一時利用が可能な場所について、自治体に紹介や情報提供を依頼。代行トラックの通行については、コンテナ2個積みトラックと3個積みセミトレーラの特車申請手続きの迅速化を国などに求めるとともに、2個積みトラックは「高さ・重さ指定道路」では通行許可が不要となるため、あらかじめ道路管理者に指定を依頼している。
港湾荷役の円滑化では、「有事の際には岸壁使用や港湾荷役作業をお願いしたいということを港湾荷役事業者など関係者に事前に説明するとともに、想定される作業フローを共有することで、いざという時の船舶代行を迅速に立ち上げるための地ならしをしている」(入江氏)と説明する。
山口地区に続き、24年度上期には北九州地区、同下期には岡山地区でもBCP対策会議を開催。新南陽駅を代行輸送の拠点とした場合、発着の相手方として想定される両エリアでも自治体や港湾関係者との連携準備が整ったことで、山陽線におけるBCP対策は一定程度進んだことになる。
25年度上期は、場所を北海道に移し、室蘭線での輸送障害を想定した対策会議を開催した。北海道を開催場所に選んだ理由は有珠山噴火への備えだ。有珠山はこれまで30~35年周期で噴火を繰り返しており、2000年に起きた前回の噴火では約2ヵ月にわたって室蘭線が不通となり、大規模なトラック代行輸送を強いられた。「前回から25年が経っており、いざという時の対応策を今から練っておく必要がある」(入江氏)。さらに今年度下期には、北東北地区での対策会議を計画している。北海道間との船舶代行の拠点になることが想定される青森港、八戸港との調整などが主なテーマになることを想定しているという。
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