カーゴニュース 2026年1月6日 第5400号
理念や方向性示す「物流基本法」策定に期待
C 物流大綱は1997年の第1次大綱から今回の第8次まで策定を重ねてきたが、毎回、「物流」がカバーする領域の広がりと深度化を感じている。とくに次期大綱は、国が「物流改革集中期間」と位置づけている2030年までの5年間における物流施策を網羅的かつ総合的に打ち出すものであり、これまでの大綱よりも重い意味を持っていると思う。改正物流効率化法で荷主を規制対象に加えるなど、物流行政そのものが大きな転換点を迎えていることを考え合わせても、より広い視座から物流のあり方を問い直すものであってほしい。その意味からも、通関業が持つ重要性が物流行政の中で正しく位置づけられる今回の動きは大いに歓迎したい。
また、物流行政という概念が広がっているという意味で、忘れてはならないキーワードが「経済安全保障」や「国防」だ。27年にも台湾有事のリスクがあると言われている中で、輸出入の大半を海上輸送に依存している日本や物流業界にとっては重要なテーマだと思う。
F 高市内閣が進める日本成長戦略の重点17分野のひとつに「港湾ロジスティクス」が挙げられたことを、経済安全保障という文脈で読み解くことも可能だと思う。25年度補正予算では港湾ロジスティクス分野に806億円の予算が配分されることとなり、港湾DXや防災・減災、サプライチェーンの強じん化などが進められることになった。
また、同じく補正予算では、国内造船業の再生・強化のために約1200億円の予算が計上され「造船業再生基金」が創設されることも決まった。造船業が経済安全保障の観点から重要な産業であるとの認識に立つものであり、広い意味で今後の物流のあり方ともリンクしてくるテーマだ。
C 経済安全保障や国防というテーマはこれまで、物流という観点からはややタブー視というか、議論が意識的に避けられてきた経緯がある。ただ、物流というのは詰まるところインフラ次第だというのも一面の事実だ。道路や港湾、空港、鉄道などのインフラがしっかりしたものであれば、その基盤の上で物流はスムーズに動く。これまでは、安保や国防という要素と正面から向き合えなかったために、日本の物流インフラが脆弱であるという事実は指摘しておきたい。
その流れで言うと、11月の参議院予算委員会で国民民主党の榛葉賀津也幹事長が貨物鉄道について質問していたのが印象深い。ウクライナ戦争では貨物鉄道が重要な役割を果たしたが、日本では有事の際に北海道から南西に物資を運ぶ際、貨物鉄道という極めて重要なインフラを有効活用すべきだ――というのが発言の趣旨だった。加えて、我が国の鉄道予算は1000億円で、道路予算の2兆円と比較して20分の1しかないという点も指摘していた。
F あれは非常に興味深い質疑だったね。例えば、青函トンネルは現状、安全上の観点から危険物を輸送することができない。そのため、国が国策として進めている半導体産業においても、製造プロセスで不可欠となる高圧ガスなどの危険物は海上輸送しかできず、サプライチェーン上の大きな課題となっている。また現在、北海道新幹線の札幌延伸に伴って存廃が議論されている並行在来線の議論についても、国防という視点を含めて考えると見え方がまったく違ってくる。物流大綱の議論からちょっと脱線してしまったが、今後の物流政策はこうした観点も包含した見地に立つ必要があると考えている。
C 脱線ついでにひとつ私見を披露すると、これだけ物流の重要性が認知されつつある今こそ、「物流基本法」のような法律をつくるべきだと思う。法律には具体的な義務や罰則を伴わず、国や社会が目指すべき基本理念や方向性を示す「理念法」というジャンルがあり、環境基本法や教育基本法などがその代表格だ。荷主が規制対象となり、さらに消費者の行動変容などが求められている中で、物流の重要性やあり方について広く理念を共有することは非常に大事なことだと思う。その上で、改正物流効率化法やトラック適正化二法などの「規制法」や「支援法」によって関係者の活動を律しつつ、物流大綱によって具体的な実行計画を推進していく――。このような体系を組むことができれば、今後の物流行政は盤石なものになると考えている。行政関係者に是非、検討をお願いしたい。
D なるほどね。そういえばカーゴニュースでも以前、国交省の外局として「物流庁」を作るべきだと社内で話し合ったことがあったね。「物流庁」という組織がなくても国交省と荷主を所管する省庁や公正取引委員会が連携して物流改革を進めているのは高く評価すべきだ。
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