カーゴニュース 2026年1月6日 第5400号
A まずは昨年(2025年)をざっと振り返ってみよう。物流に関わる法改正、新法が実現するなど行政が物流の構造改革に大きく舵を切り、業界に大きな変革をもたらした年だった。そうした中で、物流業界では大型M&Aが相次ぐなど、業界再編の流れも加速した。また、年後半には大手酒類・飲料メーカー、EC大手に対するサイバー攻撃の影響で物流が停滞し、インフラとしての物流の重要性が再認識された。他方、国際物流に目を向ければ、米国の通商政策、俗に言う「トランプ関税」に世界のサプライチェーンが翻弄され、今後についても先行きが不透明な状況が続いている。
B 昨年の最大のトピックスといえばやはり物流関連の2つの法律だろう。ひとつは荷主規制を盛り込んだ改正物流効率化法の施行、もうひとつはトラック業界内部の改革を促すトラック適正化二法の成立だ。この2つの法律によって、荷主とトラック事業者それぞれが、物流を持続的なものにするための責任を〝応分に〟負担する環境が整備されたのではないか。
改正物流効率化法は、その第1弾が25年4月から施行され、すべての荷主や物流事業者に物流効率化に取り組むための努力義務が課された。これは努力義務とはいえ、企業規模を問わず日本のすべての企業に対して物流改善に目を向けさせ、物流を「自分事」にすることを求めたという点で意義深い。
もうひとつのトラック適正化二法については、トラック事業許可に更新制を導入するという、いわば痛みを伴う改革であり、これを業界自らが主導し、議員立法の手法でスピード成立させたというのは、トラック業界の歴史に残る出来事だった。
物流業界を取り巻く環境としては、25年1月に就任した米国トランプ大統領が公約に掲げた関税政策に「身構える」ところからスタートした。日米交渉により当初の高関税は回避され、1~3月には「駆け込み」輸出があったため、物流業界への深刻な影響はまだ顕在化していない。ただし、米国での現地生産を強化するメーカーの動きが加速しており、長期的には日本発の輸出や国内物流の減少に影響してくることが予測される。最近では、米国で生産された日本車を逆輸入するといった報道もあり、今後の物流のあり方を変えることになるかもしれない。また、年末にかけては、高市早苗首相の台湾有事を巡る発言を受け、日中関係が悪化し、輸出入や国際物流の影響にも不安を残した。
国内物流全般としては、物価上昇の影響で消費財を中心に荷動きが冴えなかった。トラック運賃に関しても、需給バランスの影響を受けて下期辺りから上昇機運に陰りが見え始めた。物流業者の業績については、25年度上期までを見ると、価格転嫁の成否で明暗が分かれたのが印象的だった。
昨年は引き続き物流業界のM&Aが活発だった。日本郵便によるトナミホールディングスのTOB(株式公開買い付け)やSBSホールディングスによるブリヂストン物流の子会社化、センコーグループホールディングスによる丸運のTOBなど業界再編が加速した。一方で、アクティビストの活動が活発化したことや、東京証券取引所(東証)による資本効率経営の要請、上場企業に対する各種情報開示圧力などを背景に、「上場疲れ」が物流業界にも波及してきた。その結果、経営の自由度を高める目的で、MBO(経営陣による買収)によって上場を廃止する企業も増えた。
大手酒類・飲料メーカーや通販大手へのサイバー攻撃の影響が長期に及んだことも大きなニュースだった。物流システムが攻撃の対象となったことで、物流におけるサイバーセキュリティ対策の重要性や危機感が共有された年でもあった。
C たしかに2つの法律が実現したことは大きい。まず、改正物流効率化法だが、30年以上、物流業界の取材に携わってきた人間として、物流行政において「荷主」が規制対象となったことは、非常に画期的だと感じた。荷主は荷物の「出し手」であり物流を発生させている主体ではあったが、法規制の縛りという点では問題になるのはせいぜい「過積載」くらいだった。今回、物流の法体系の枠組みの中に「荷主」を明確に位置付けたことは、物流史の中でも特筆されるべき出来事だと思う。ただ、法体系としての大枠はできたものの、運用フェーズに入ればいろいろな矛盾や不整合が出てくることが予想される。今年はそれらを一つひとつ潰しながら、法としての実効性を高めていくことになるだろう。
一方、トラック適正化二法は、改正物流効率化法の荷主規制に対する〝打ち返し〟ととらえていいだろう。荷主に規制をかける以上、トラック事業者に対しても応分な責任を求めていくのは当然の流れだ。許可更新制の導入などトラック業界が身を切る改革を自ら引き受けたという点で、トラック適正化二法が実現したことを率直に評価したい。仮に、この法律がこのタイミングで施行されていなかったら、どうなっていたか――。荷主からは、「こっちは罰則付きの規制までかけられて物流効率化に取り組んでいるのに、トラック事業者側は身を切る改革をしているのか」という反発を招くことも予想できた。そこに先んじて手を打ち、トラック事業者にとって自主規制的な法律を業界自らがつくったことに高い価値があると思う。
トランプ関税については、荷動きへの影響も含めこれからいろいろな実害が出てくるだろう。一方で、トランプ関税は必ずしもネガティブな要素だけではない。これまで物流の世界で今ひとつしっかりとらえられていなかった「関税」という存在や課税という機能にスポットライトが当たることになった。トランプ関税というファクターによって、関税というものが国際サプライチェーンにおいてクリティカルな要素であるという共通認識が広がり、「関税政策」や「通関行政」も広い意味で物流行政の中にとらえるべきだという視座が確立された。ちょうど次期総合物流施策大綱の策定のタイミングと重なったことで、今後の物流施策に一定のインパクトを与えることになったと思う。
25年の荷動きを振り返ると、国内、海外ともにあまり活発ではなかった。「2024年問題」がスタートして2年目だったが、当初懸念されていたような「モノが運べない」といった混乱は起きていないという見方が大半だ。しかし、これはひとえに荷動きに今ひとつ力強さがなかったからではないか。実際に、11月末の「ブラックフライデー」の前後には、宅配便を中心にトラック輸送の需給がひっ迫し、一部で遅配などの混乱が顕在化した場面も見られた。
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