カーゴニュース 2026年1月6日 第5400号

テーマ①昨年を振り返る
荷主、トラックに関わる2つの法律が実現

2026/01/05 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 行政

「関税」で国際物流の不透明さ増す

 

  ちょっと視点を変えて、政治の動きから物流を見ていくと、トラック業界にツキが回ってきた印象だ。10月に憲政史上初となる女性の内閣総理大臣が誕生した。高市早苗総理は自民党の総裁選に出馬する際、公約の中でガソリンと軽油の暫定税率廃止を掲げており、首相に選ばれてそれが実現した。また、財務大臣にも初めて女性が就任した。片山さつき財務大臣は自民党トラック議連の副会長であり、選挙でもトラック業界の支持を受けるなど業界との関係が深い。今回、国の予算配分の中枢を担う財務省のトップに就いたことで業界からの期待も高まっている。暫定税率撤廃を掲げていた高市総理、トラック業界の意向を汲む片山財務相のコンビが誕生し、6党合意も含めて暫定税率という長年事業者には大きな負担だった燃料費の問題が解決したのは快挙と言えるのではないか。

 

 また、先ほどから言われているように、「関税」という言葉が広く世間にも浸透した年だった。自由貿易経済のもと、「関税は次第に低くなっていく」世界だったのが、トランプ大統領の登場でその流れに逆回転がかかった。米国が関税を引き上げれば、中国もそれに対抗措置を講じるなど、関税によって経済やモノの動きが激変することがわかった。一般消費者ですら、関税が経済や暮らしに与える影響を認知するようになった。

 

 物流関係者は関税の影響をどう受け止めるべきなのか――。関税によって生産拠点の変更などサプライチェーンに変化が生じる可能性は高く、注視していく必要がある。2030年に向けた次期総合物流施策大綱の検討委員会での議論の流れや座長を務める根本敏則氏のコメントからは、安定的なサプライチェーンを確保する観点で、次期「物流大綱」では国際物流の多元化・強じん化が重要施策のひとつになると予想できる。その意味で次期「物流大綱」では関税のプロフェッショナルである「通関業」に関する言及もありそうだ。

女性初の首相と財務大臣がトラック業界を応援

 国内の荷動きについて触れると、NX総合研究所は25年度の貨物輸送について荷量が減少するという見通しを発表している。ただ、EC・宅配分野の荷動きは堅調だ。宅配大手3社の上期(25年4月~9月)の実績を見ると、取扱数量が前年同期比で2・5%増となっている。

 

 国際物流では、やはりトランプ関税が一番大きなトピックだ。日本の主要自動車メーカーにとって米国は最大の市場であり、米国向けの自動車関連輸出を中心に影響の大きさが懸念されていたが、とりあえずは日米合意に基づいて15%への引き下げで決着となった。しかし、トランプ大統領の通商政策は不確実性をはらみ、税率の適用時期やその変更に関する動向が読みにくい。このため中長期でのサプライチェーン戦略が立てづらい状況にある。物流会社に尋ねても「不透明で今後の予想が立たないため、注視するしかない」と異口同音の答えが返ってくる。トランプ大統領の思惑通り、米国内での製造拠点の国内回帰(リショアリング)が進むかどうかも見通せない。一度構築したサプライチェーンを変えるのは容易ではない。人件費も含めた製造コストを考えると、トランプ大統領の任期4年間は〝様子見〟という企業も少なくないのではないか。

関税が国際物流に大きく影響
関税の自動車業界への影響も懸念された

身近な出来事から国民が「物流」に関心

 

  昨年は、国民生活にダイレクトな影響を及ぼす出来事に、物流が密接に関わっていることが見えてきた年でもあった。

 

 そのひとつがコメ問題だ。コメの価格が上がって消費者の不満が高まっている中で、政府は備蓄米の放出を決定した。備蓄米を保管していた倉庫から一気にコメが出荷され、保管料収入がなくなり倉庫会社の経営に打撃となっていることがニュースでも報じられた。これについては、倉庫業界が逸失保管料の補償を国に求め、農水省が補正予算で補償に応じることとなった。世間では「政府備蓄米」という存在を初めて知り、備蓄という機能を支えている倉庫が食の安定供給に重要な役割を果たしていることに改めて気づいた人もいるだろう。そういう意味では、備蓄米放出に絡む一連の問題は、コメという日本人にとって一番身近な食材を通して、物流の果たしている役割や課題を理解する有益な機会にもなったと思う。

 

 日本郵便の不適切点呼問題も一般の人の目に触れた物流の大きな話題だった。全国の郵便局の7割で不適切な点呼および記録の改ざんがあったため、国交省から2500台に対して貨物運送事業許可の取り消し処分を受けた。さらには軽車両に関しても車両停止の処分を受け、最終的に2000局以上が処分を受ける見通しとなっている。

 

 「郵便屋さん」として知られ、全国ネットワークを持ち、誰もが知るインフラ企業の大規模な不祥事は、消費者にとっても強いインパクトがあった。外部への業務委託が進んでいることもあり、集荷・配達に深刻な影響は出ないと見られるが、委託費の増加など業績に影響が出始めており、今後の動向によっては、さらに世間から注目を浴びる可能性がある。

 

  昨年は「準備」と「対策」というキーワードで語れる年だったと思う。物価高による消費の減速により荷動きが緩慢になり、建設費の高騰や物流施設の供給過剰感から、倉庫の新設を手控える傾向が見られた。積極的な設備投資による売上の拡大よりも、法改正への対応など足元を固める年ともなった。この一年間でどれだけ対応を進められたかで、今後大きな差がついてくるのではないか。

 

 注目されるトピックスとしては、トラック運送業界で特定技能外国人材の活用が本格的に始まった。現状ではまだ海外で人材を教育して確保する形式だが、日本にいる外国人をドライバーとして雇用する動きにシフトした時に、今から先行的に外国人ドライバーの雇用を進めている企業はノウハウが蓄積され、人材をスムーズに確保できるのではないかと思う。

 

 大手あるいは中堅物流企業による中小トラック運送事業者のM&Aも引き続き活発だった。M&Aのノウハウの蓄積も一朝一夕にはいかず、M&Aの実績が豊富な企業に案件情報も集まる傾向がある。また、過去の失敗例が、次のM&Aに活かせるという話もよく聞く。今のうちから少しずつでもM&Aを行っている企業の方がM&Aの機会に恵まれ、将来、業界全体として車両や設備、ドライバーが足りなくなった際に安定した事業基盤をもって荷主のニーズに応えられるのではないか。

 

 改正物流効率化法で一定規模以上の荷主に義務付けられる物流統括管理者(CLO=Chief Logistics Officer)の選任についても、国が周知に努め、企業はCLOの役割を確認し、誰をCLOにするのか候補者を検討している段階にある。来年度以降、実際に選任が始まっていざ効率化に取り組もうというときに、CLOの社内での位置付けや果たすべき役割について、前倒しで綿密な検討を重ね、ふさわしい技能と能力を持った人をCLOに選んだ会社と、そうでない会社とでは物流の競争力や効率化の進展で差がつくのではないか。

 

 現行の総合物流施策大綱が今年度に終了し、来年度以降、30年に向けた新たな大綱に基づく施策がスタートする。そこで掲げられた事業変革に向けたプランを実行していく際にも、今からどれだけ体制を整えられたかが、成否を左右することになるのではないか。

 

  「準備」と「対策」の年だったというのはいい視点だね。今、物流はいろいろな意味でパラダイムシフトが起きている。外国人材の活用や、新たな法規制もしかりだ。政府は輸送力不足が年々深刻化する30年度までの期間を「物流の集中改革期間」に位置づけているが、確かに25年は30年度までの5年間に向けた準備や〝仕込み〟の年だったとも言える。 

物流の問題が身近な存在に
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