繊維や樹脂・フィルムなど製品は多様

カーゴニュース 2026年5月28日 第5438号

東レ
パレット化推進などで物流改善を加速

創業100周年迎え〝運べない危機〟回避へ

2026/05/27 16:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 危険物・化学品 パレット

 繊維や機能化成品などの化学品大手メーカーとして、今年で創業100周年を迎えた東レ(本社・東京都中央区、大矢光雄社長)は、持続可能なサプライチェーンにおける競争力強化や海外を含めたグループ全体での物流最適化に向けた様々な物流改善を進めている。RFIDパレットを導入したパレチゼーションや専用ラックの活用、協力会社や同業他社との密な連携などを重要施策として進め、BtoB産業における物流改革の〝ロールモデル〟となることを目指す。

 

「アマゾンショック」きっかけに物流改革を本格化

 

 東レグループの物流組織は、東レ内の3部署に加え、国内外の関係会社各社の物流部、東レインターナショナルなどの輸出入を手がける商事会社、加えて東レの物流子会社である東洋運輸で構成されており、東レ内の物流関連業務は購買・物流部門が担っている。物流業務を委託している協力会社は100社近くにおよぶが、購買・物流部門の高橋一素物流部長は「当社では各事業本部の事業計画に基づき、物流部が自前で最適な物流設計を行い、物流会社と契約している。物流子会社の東洋運輸に総元請として物流全般を任せる形態とはなっていない。これは化学品メーカーとして珍しいケースとなっている」と語る。

 

 同社は全国に13ヵ所の生産拠点を設けており、倉庫拠点は、工場内や近隣倉庫に加え、消費地拠点や顧客近隣倉庫など、約180拠点を配備している。製品が多様なことから、平置きから液体タンク、冷凍・冷蔵倉庫など求められる保管体制は多く、荷姿もパターンが様々だ。繊維はカートンケースに入れられるものもあれば、反物(ロール)として扱うものもあり、樹脂やフィルムはフレコンや紙袋、パレット、専用架台などで、中間原料は専用の大型ローリー車で輸送。製品形態や輸送地域、輸送量に合わせて最適な輸送方法や物流会社を採用している。

 

 東レはかねてから、物流コスト削減などの取り組みを進めてきたが、「2024年問題」に先駆けて、本格的な物流改善に乗り出したのは2017年の「アマゾンショック」が契機となる。様々な場所で〝運べない危機〟がささやかれるようになり、運送業界で荷主に対する値上げ要請の機運が高まっていた。東レの場合、とくにバラ製品を中心とした輸送の困難が懸念されるようになり、実際に紙袋で輸送される樹脂製品については輸送を断る運送会社も現れたという。こうした流れを受けて同社では19年に「ホワイト物流」推進運動の自主行動宣言を提出し、トラックドライバーの負荷軽減に向けて本格的な物流改善に着手した。

樹脂のパレット輸送を推進

RFIDパレット採用で効率的な輸送体制を構築

 

 各種施策を進めるなかでも重点的な取り組みのひとつが、紙袋でのバラ輸送だった樹脂製品の一貫パレット輸送への転換だ。従来はパレットの紛失リスクから顧客先によってはバラ出荷もあり、物流改善に向けて一貫パレチゼーションに取り組むこととしたが、課題となったのが紛失・流出を防ぐためのパレットの個体管理だった。そこで東レではユーピーアール(upr)が提供するRFID搭載のスマートパレットを採用し、パレット一貫輸送の体制を構築。パレチゼーションにより、手荷役の負担を大幅に解消し、労働環境の改善と生産性向上を実現した。RFIDタグでの管理によりパレットの追跡が可能となったことから、効率的な個体管理も実現した。

 

 具体的な成果として、製品積み降ろし時間を75%短縮、トラック待機時間は38%削減、事務作業時間は台帳への記載時間がなくなったことで、100%の削減につながった。また、荷物の載せ替えに伴う破袋などの物流事故は41%削減を実現し、加えてパレット回収の効率化でCO2排出量の削減にもつなげている。

 

 パレット化にあたっての課題として物流部物流第1課長の藤本賢史氏は「樹脂の場合、1パレットにつき1tを載せることができる一方、1tのオーダーをいただけないとパレット輸送が難しい。そこでお客様には最低100㎏からのオーダーをお願いしている」と語る。今後は、トラックドライバーの荷役時間削減の観点から、まだパレット化を進められていない品目や小口のオーダーといったバラ輸送されているものについても積極的にパレット化へと移行したい考えだ。また、環境負荷低減に向けては、輸入に使われた1WAYパレットが廃棄されていることに着目し、国内外への輸送に転用するなどの有効活用につなげていく計画としている。

 

 

テキスタイル製品専用の「S-RACK」

テキスタイル専用ラック普及でSC全体の競争力強化

 

 自社工場から出荷される輸送の効率化だけでなく、産地企業から出荷されるテキスタイル(織物)製品の輸送についても、手荷役の削減に注力し、繊維業界の競争力強化を目指す。繊維産業では自社工場で生産された糸綿を、北陸を中心とした産地企業に出荷。テキスタイル、染色、縫製と長いサプライチェーンを経て最終製品となる。テキスタイル製品は生地幅が1・5m~3m超の幅広であり、かつ重量が30~50㎏の反物の場合、従来は人手でトラックの荷室に積み込むなど、マンパワーに依存した荷役作業が業界で定着していた。東レではトラックドライバーの人手不足や高齢化の煽りを受けて荷役作業の改善に着手した。

 

 その一手として、東洋運輸が開発した、大型トラックや海上コンテナサイズに適合するテキスタイル専用の折りたたみ式ラック「S―RACK」を導入。「S―RACK」はロール状の製品をラック内に積み込んだ後、フォークリフトによってラックごとトラックへと積載できるもの。これにより、反物の荷役にかかる作業時間を従来の2時間から30分へと短縮。改正物流効率化法における荷待ち・荷役の「2時間ルール」への対応を実現した。今後は「S―RACK」による輸送を関係会社や北陸を中心とした産地企業にも水平展開することで、繊維業界でのデファクト化を図る方針だ。

 

 高橋氏は「テキスタイル製品の手荷役削減の取り組みは、当社の物流改善の象徴的な取り組みとなっている。当社では糸や綿といった原料の生産・物流をコア事業としているが、一方で事業拡大や付加価値の創出に向けて、大手アパレル企業製品の生産・流通加工なども手がけている。サプライチェーンでの物流コスト面のメリットや業務のスピード感を確保するためにも、物流の課題解決は、当社のビジネス面での競争力を高めることにつながる」と強調。そのうえで「繊維業界で事業撤退が相次ぐなかで、当社がサプライチェーンの維持や改善にしっかり努めていかなければならない。繊維事業はもとよりの他の事業でも同様に、物流改善を進めていく必要がある」と語る。

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