カーゴニュース 2024年4月9日 第5232号

貨眺富営 292 中田 信哉(神奈川大学名誉教授)

「おおらかな話」

2024/04/09 18:00
コラム・寄稿

しぐるゝや目鼻もわかず火吹竹 茅舎

 

 

一生懸命火吹竹を吹いている子の顔は目も鼻も口もごっちゃになっている。

 

昔の話です。僕はメーカーの新入社員でヒラの仕事は受注発送の受払い。わが課の保管配送はM運送に全面委託。 課長は「Mから請求書が来たら君がチェックして適当に金額をカットしろ」と言う。MのS常務が毎日来て、僕のデスクの横に坐ってお茶を飲みながら雑談をする。Sさんにはお世話になった。月一回の棚卸しの日には寿司屋に連れて行ってもらった。会社の偉い人も若い頃、Sさんには面倒を掛けたらしい。ある重役は酔っ払って街中で喧嘩をして警察につれていかれた時、 身柄引取はSさんだった。こんなこと、会社の上司には頼めない。将来に響く。聞いたところではおおむねすべての管理職がいろいろなことでSさんの世話になっていた様子。僕はSさんに「課長は請求を減額しろ、と言うがどうしようか」と相談した。Sさんは「適当にやっておけばいいよ。どうせ、課長の段階でさらに万単位のカットになる。うちもそれを計算に入れている」と言った。今ではそんなこともないだろうが、当時はバブル崩壊以前のおおらかな時代だった。


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