カーゴニュース 2026年7月30日 第5456号

行政レポート
「トラック適正化二法」の〝全貌〟を読み解く

「適正原価」の制度設計にも注目

2026/07/29 16:00
全文公開記事 行政・立法 トラック輸送 運賃・コスト

ポイント③

事業許可更新審査は適正原価の遵守も基準

 

 トラック適正化法で、「適正原価」がトラック運送業界にとってアメだとすれば、ムチにあたる、すなわち身を切る改革とされるのが、事業許可の更新制だ。トラック運送事業の許可は今後は永久でなく、5年ごとに更新審査を受けなければ効力を失うこととなる。許可基準には「法令の規定を遵守して事業を遂行することが見込まれること」を新たに追加し、輸送の安全確保、社会保険料の納付、「適正原価」の収受をはじめ、法令の規定を遵守しない場合は事業許可が更新されず、市場から退出せざるを得なくなる。

 

 5年間を通じて「適正原価」を下回る受注が継続する事業者は、事業許可の要件を満たしていないとされ、更新が認められない。このように適正原価は事業許可の更新と密接に関わっており、トラック運送業界の規模を適切に維持するためにも、「現実性」と「実効性」の両面から慎重な検討が求められそうだ。また、更新申請時には、一定の手数料収受を想定しており、事業許可更新に関する事務の一部は独立行政法人が行うことを想定している。その詳細については、28年6月までをメドに決定する予定だ。

 

ポイント④

委託次数、「2次までに制限」は努力義務

 

 「適正原価」「事業許可の更新制」に先行し、委託次数の制限と関連項目、「白トラ」に関する荷主規制強化は4月に施行された。このうち、委託次数の制限については、トラック運送事業者・利用運送事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送について、他のトラック運送事業者の行う運送を利用するときは、委託段階を2次までに制限するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。ただ、これは「努力義務」であり、トラック運送業界からも「努力義務でよかった」との本音も聞こえる。

 

 元請事業者は、自らを「ゼロ次」とした場合、「2次請け」=再々委託までに制限するルールを設ける必要がある。これは、一般貨物運送事業者だけでなく、貨物利用運送事業者、軽貨物運送事業者、特定貨物運送事業者にも適用される。また、運送契約書面の交付義務、実運送体制管理簿の作成義務等を貨物利用運送事業者にも義務化した。これらの施策に加え、標準貨物自動車運送約款の改正で10%の利用運送手数料収受が規定されたことも、多重下請構造の是正につながる見通しだ。

利用運送事業者に対しても書面交付を義務化

ポイント⑤

「白トラ」を使う荷主にも罰則、抑止効果期待

 

 トラック適正化二法により「白トラ」を利用する荷主への罰則が定められ、違反者には100万円以下の罰金に処せられる。現在の法律では、違法「白トラ」で運送した側が処罰対象。また、荷主側は幇助犯、共同正犯等の共犯関係にある場合に限り、処罰対象となっていたが、その範囲は狭く、また、立証も難しいのが実情だった。今後は荷主側が違法「白トラ」と認識して発注しただけで違法となり得るため、荷主側の関心や遵法意識が向上し、効果的に抑止力が発揮されることが期待される。

 

 違法「白トラ」に関わっているおそれや疑いのある荷主等に対しては、トラック・物流Gメンが是正指導を行うことができる。当該行為をしているおそれがあると認めるとき、荷主などに対し要請を行う。当該行為をしていると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは勧告・公表を実施する。公正取引委員会など関係省庁、トラック協会のトラックGメン調査員など関係機関とも連携し、違法「白トラ」の効果的な防止を図るために必要な協力を行う。

 

 法改正を受け、取り締まりも強化されている。今月、トラック適正化二法施行後の初となる荷主の「白トラ」利用への取り締まりが愛媛県警と警視庁により実施された。水産物輸出入会社(愛媛県松山市)とその代表取締役が貨物自動車運送事業法違反(無許可等で貨物自動車運送事業を経営する者への貨物の運送の委託の禁止無許可業者への委託)の疑いで書類送検された。山口県の下関港から東京・豊洲市場まで無許可業者に有償で運送を委託したという。白トラに運送を委託した荷主側へのこうした罰則は、法施行から初めてのケースとなった。

 

 そのほか、トラック適正化二法では「労働環境の適正な整備に留意すること」を明記し、事業者の義務として「労働者の適切な処遇の確保のために必要な措置を実施すること」を追加した。これは事業許可更新の要件にも含まれることとなった。

「白トラ」使用禁止の啓発リーフレット
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