カーゴニュース 2026年7月30日 第5456号
特積み業界の老舗企業として東北を起点としたネットワークを展開している第一貨物(本社・山形県山形市)。2025年度からスタートした中期経営計画では、主力の特積み事業における運賃適正化やロジスティクス事業の拡大などを通じ、利益率の改善に力を入れている。三菱倉庫出身で今年4月に社長に就任した越智史朗氏に、今後の事業成長や特積み事業の持続性確保に向けた取り組みを聞いた。 (インタビュアー/西村旦・吉野俊彦)
「プライドと自信」を持てる会社にしていく
――今年4月に社長に就任されました。まずは、抱負からお聞かせください。
越智 前職の三菱倉庫時代も含め約40年という長い期間を物流業界で過ごし、トラック運送事業者である当社に入ってから2年半が過ぎましたが、あらためて厳しい世界だと実感しています。振り返ってみると、1990年の物流二法施行による規制緩和がターニングポイントとなり、物流業界は長く厳しい時代を生き抜いてきました。この30年の間に、当社のドライバー数も4500人から3000人まで減少しています。
ただ、今年4月から全面施行された改正物流効率化法をはじめとする制度改正により、これまでの厳しい流れが大きく変化していくという期待を抱いています。当社としてもこの機を逃さず、お客様と真摯に向き合いながら、業績改善とドライバーをはじめとする働き手の労働条件改善を同時に進めていきたいと考えています。人数が減ったとはいえ、当社は3000人という多数のドライバーを抱える会社です。物流全体の持続性を担保していくためにも、協力できる会社とはしっかり手を結びながら、日本の物流適正化に貢献できる会社として成長していく所存です。
他方、従業員や社内に対しては、「プライドと自信を持てる会社にしていきたい」というメッセージを発信しています。プライドはプロ意識と経験に裏づけられるものであり、自信は安全・安心に直結するとともに、それを担保できるだけの実力が求められます。当社の従業員は真面目で規律正しい人間が多いことが強みですが、さらにプライドと自信を持ちながら働くことができる会社にしていきたいと考えています。
――前期(2026年3月期)は3ヵ年の中期経営計画の初年度でしたが、業績は増収減益という着地になりました。
越智 前期からスタートした中期経営計画は、マクロ的な国内物量が伸びない前提に立って、そのなかでも利益をしっかり確保していくことを基本方針にしています。そのなかで前期の特積み事業は、物量は若干増えたものの、トン当たり運賃が想定よりも伸びなかった結果、売上は1%台の増収にとどまりました。トン当たり運賃が伸びなかった理由は、お客様との運賃・料金をはじめとする条件改善交渉が思った以上に難航したことと、単価の低い近距離貨物の取り扱いが増えたことで、平均単価を押し下げてしまったことです。また、利益面では、自社ドライバーの不足によって集配、幹線運行の両面で外部委託費が増えたことに加え、人件費や燃油費など諸コストの上昇が利益を圧迫しました。その結果、主力の特積み事業の利益は黒字ぎりぎりのレベルになりました。
一方、ロジスティクス事業は、新規顧客の開拓に加え、既存顧客の拡販が順調に進み、売上高は前期を上回りました。また、倉庫料金の適正収受などの条件改善や作業効率化が進んだことで利益率も改善し、特積み事業での減益を補完することができました。
――特積み事業での条件改善が難航したとのことですが、その要因をどのように分析していますか。
越智 当社はかなり以前から運賃適正化をはじめとする条件改善に取り組んでいます。お客様からすれば、毎年のように交渉を求められ、少なからず〝交渉疲れ〟が生じている面があったように思います。また、仮に運賃値上げに応じていただけたとしても、適用開始までにタイムラグが生じるケースは少なくありません。その間も足元のコストは上昇を続けているわけで、その結果として、コスト上昇分をカバーするに至らなかったと分析しています。
条件改善による運賃適正化と外注費抑制に注力
――中計2年目となる今期は、どのような取り組みに注力していく方針でしょうか。
越智 最大のポイントとなるのは、やはり条件改善です。運賃単価の伸び率が少なくとも物価上昇率を上回らない限り、ドライバーの労働条件を改善するための原資を生み出すことはできません。そこで今期は、当社のすべてのお客様と交渉を行っていくことに全社を挙げて取り組んでいます。当社の顧客数は細かい取引先を含めると約2万社ありますが、そのうちの約1万社については担当者が直接交渉を行い、残りのお客様についても文書による依頼などを含め何らかの意思表示を行っていきます。成果が出てくるのはこれからですが、法改正など行政側の後押しもあって、お客様側も少なくとも話を聞いていただける状況にはなっています。そうした追い風を逃さず、着実な収益改善につなげていきたいと考えています。
また、平均運賃単価を引き上げていくためには、運ぶ貨物をある程度選んでいくことも必要です。当社はこれまで、依頼された仕事は基本的に断らないというポリシーがありましたが、前期は低単価の近距離貨物を多く引き受けたことで、利益を悪化させる結果となってしまいました。今後は戦力に限りがあるなかで、より収益性の高い貨物を見極めていく取り組みが不可欠だと感じています。
――収益を増やす取り組みに加えて、コスト抑制を進めていくことも重要です。
越智 コスト削減における最大の眼目は、集配業務や幹線運行にかかる外注費をいかに抑えるかです。傭車にかかるコストは自社で運ぶ場合の2倍近くになります。しかし、自社戦力が不足しているために、外部事業者に委託せざるを得ない状態が続いているのが偽らざる実態です。そこで今期から、とくに外注比率が高いエリアなどを対象に、ドライバー職の労働条件を大幅に改善しました。ドライバーの減少を食い止め、外注費の増加を抑えることを目的にしており、うまく行けばかなりの効果が期待できます。すでに下げ止まりの兆候が見られるなど、成果が少しずつ出始めています。
――運賃面では、国による「適正原価制度」の仕組みづくりが始まっており、28年6月までには新制度がスタートする予定です。
越智 適正原価制度には大いに期待しています。1990年に施行された物流二法の規制緩和によって、商品価格などに占める物流コストの割合が約6%から4%程度まで下がったと言われています。そうした前提を踏まえると、適正原価は現行水準の1・5倍くらいまで引き上げることが適切ではないかという感触を持っています。そうしなければ、ドライバーの待遇を全産業平均レベルまで改善することは難しく、ドライバー不足の流れに歯止めをかけることができないと考えています。
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