カーゴニュース 2026年10月20日 第5476号

CLOに訊く vol.7
部門連携で物流改善、取り組みを徹底
J―オイルミルズ
執行役員SCM統括部長
畑谷一美 氏

油脂特有の課題解消へ業界全体で連携

2026/10/19 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 インタビュー

 食用油メーカーのJ―オイルミルズ(本社・東京都中央区、春山裕一郎代表取締役社長執行役員CEO)は、製油業界ならではの特殊な物流体制で生じる物流課題を乗り越えるため、社内組織の設立を通じ、部門間で連携した横断的な取り組みを進めている。また、業界団体を通じた行政との対話にも積極的だ。2025年12月に物流統轄管理者(CLO)に選任された畑谷一美執行役員SCM統括部長に、これまでの取り組みと今後の対応について訊いた。(インタビュアー/松浦優樹)

 

ローリー車をメインに、

多様な輸送モードを利用

 

 ――まずは畑谷様のこれまでのキャリアについて教えてください。

 

 畑谷 1991年に味の素へ入社、2003年から本格的に物流業務へ携わるようになりました。08年には味の素グループのロジスティクスプロジェクトの一環として、当時の味の素物流へ出向しました。15年に味の素へ復職し、国内の物流業務の管理を手掛けた後、食品業界の共同輸配送の取り組みであるF―LINEプロジェクトの立ち上げに携わりました。

 

 そして、同年からJ―オイルミルズに出向し、21年からはサプライチェーンコントロールセンター長を担い、22年に執行役員に就任しました。物流統括管理者(CLO)には昨年12月に選任されました。

 

 ――味の素グループで20年以上物流に携わってきて、食品業界に関する多くの物流課題に対面してきたと思います。貴社のように油脂事業を基幹ビジネスとする場合、他の食品と異なる特殊な物流体制が求められるのでしょうか。

 

 畑谷 当社では、食用油に加え、搾油後に残る油糧(ミール)も鶏や豚の飼料の原料として配合飼料メーカー向けに販売しており、この2種類がメインの商品となります。それに加えて、油脂加工品としてマーガリン、粉末油脂といった商品を取り扱っています。生産拠点は国内に6拠点設けており、商品によって輸送体制や管理方法も様々で、在庫拠点も異なっており、商品の特性に応じた物流体制を構築しています。

 

 たとえば食用油は、一斗缶をはじめバッグインボックスといった内袋がある段ボール箱などに梱包した「包装品」をトラックで輸送し、工場の在庫拠点や地方のエリアごとの在庫拠点からハブアンドスポーク方式で納品しています。また、食用油を直接専用のタンクに充填するバルクローリー車での輸送は、食品メーカーや惣菜メーカーの工場への直送体制で納品しており、輸送手段のなかでも大きなウェイトを占めています。

 

 このほかにも、ミールは主にバラ積みの内航船で輸送しており、マーガリンなどは低温物流のネットワークを活用して運んでいます。また、常温品の一部では路線便を採用しています。さらに、包装品などを地方のストックポイントまで運ぶ際には、一部で鉄道輸送や、フェリーによる船舶輸送も実施しています。

J―オイルミルズの製品

「物流ハンドブック」で

社員の実務理解を徹底

 

 ――J―オイルミルズではどのような物流課題があり、いかに改善に取り組んできたのでしょうか。

 

 畑谷 かつての当社の販売物流の管理では、物流部門であるロジスティクス部に加え、一部を事業部門が担当していました。他方、調達物流の管理に関しては原料部がサプライヤーを決定しているほか、工場への調達は各工場が発注をかけるなど、発荷主としての管理と着荷主としての管理で担当部署が分かれており、一元管理が難しい状態でした。当時、「2024年問題」を見据え自社の物流を的確に改善していくには、まず全社横断的に自社の物流を把握・管理できる体制を作ることが必要でした。

 

 そこで、社内を横断する組織である「サステナビリティ委員会」の傘下に「物流分科会」を23年に立ち上げました。販売・調達物流の管理を分科会が一括で担当し、分科会の事務局をロジスティクス部が担うことで、分散していた物流管理を一元化する体制を構築しました。

「サステナビリティ委員会」の傘下に「物流分科会」を設置

 ――一元管理の体制を構築することで、発荷主としての改善も、着荷主としての改善も指示しやすい体制が整ったわけですね。新体制のもとでは、社員への物流改善の意識醸成も重要になってきます。

 

 畑谷 当社で物流業務に携わりだした頃、物流に対する部門間での認識の隔たりに課題を感じました。物流改善に着手するには、社内の関係部署が同じ方向を向いている必要があります。たとえば当時、営業部門は、物流改善を取引先に提案することが取引関係に影響を及ぼしかねないと慎重にならざるを得なかった一方で、物流部門も、従来の体制のもとでは現場の実態や業界全体の動向を十分に言語化しきれていないという状況でした。営業から「他社はどうしているのか」と問われても、明確な説明が難しい場面があり、結果として部門間の連携がうまくできていませんでした。

 

 そこで、自社の輸送形態や物流ネットワークの実態理解の促進に向けて、社内教育用のルールを記した「物流ハンドブック」を制作しました。具体的な内容として、たとえば輸送モードに関しては、トラックに加え、冷蔵車、大型・小型ローリー、路線便といった5つのモードのそれぞれの特性を解説しています。ローリーの場合、ハッチはどこにあってどこから油を積み込むのか、荷受先でどのように受け渡すのか、どのように洗浄するのかといったことを可視化しています。トラックにしても、ハブアンドスポークのネットワークや路線便における運送約款上の扱いといった基本的な知識を説明しています。

 

 この「物流ハンドブック」をもとに、関係部門と知識を共有することで教育の効果を高めつつ連携を取りやすい体制を構築していきました。「物流ハンドブック」は従業員がいつでも確認できるよう社内ポータルサイトに掲載しています。

実務理解促進へ「物流ハンドブック」を作成

 ――「物流ハンドブック」を利用し、物流実務の理解を促進したことが、具体的にどのような改善に貢献したのでしょうか。

 

 畑谷 当社では24年4月に納品リードタイムの延長に着手しました。すると、実施から2ヵ月後には輸送の98%においてリードタイム延長を実現できました。この迅速な成功につながった理由は、「物流ハンドブック」を通じて営業部門における物流実務に関する理解が深まったたことで、納品先に対して「なぜリードタイム延長が必要なのか」「具体的にどこに課題があるのか」を細やかに説明でき、スムーズに交渉が進んだという点にあります。当社はほとんどの納品先でリードタイム延長を早期に実現しており、物流会社からも評価をいただいています。

 

 ハンドブックは単に作って終わりでは、十分に活用しきれません。内容に関して説明会を実施し、顧客からの業務に関する問い合わせに際しハンドブックで対応内容を確認するなど、日々の業務の中でも活用しています。「物流ハンドブック」の内容は適宜改定しており、直近の法改正についても逐一反映しています。業界団体で物流に関する新たな合意事項ができた場合にも、内容に組み込むようにしています。

1 2
続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。
  • バックナンバー

日付で探す

* 毎週火曜日・木曜日発行。(祝日は休刊)

第一倉庫株式会社 日本通運 uprのピーアール。 鉄道貨物協会 第一工業株式会社 アライプロバンス ジェイエスキューブ 建荷協 富士物流のホームページにニュースを提供中!! 日通NECロジスティクス提供 物流用語集