カーゴニュース 2026年10月20日 第5476号

CLOに訊く vol.7
部門連携で物流改善、取り組みを徹底
J―オイルミルズ
執行役員SCM統括部長
畑谷一美 氏

油脂特有の課題解消へ業界全体で連携

2026/10/19 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 インタビュー

外装表示見直しへガイドライン策定、現場の負荷軽減

 

 ――ドライバーの負荷軽減にあたっては、リードタイム延長のほかにも取り組みはありますか。

 

 畑谷 21年に設けた「外装標準化分科会」で、当社専用の外装表示ガイドラインを新たに作り込み、一括表示の体制へ移行しました。

 

 基準となるガイドラインを策定したこともあり、さらなる物流最適化につなげるため、24年4月から家庭用油脂製品で、今年1月からは業務用油脂製品で、賞味期限の表示を従来の年月日表示から年月表示に変更しました。併せて、賞味期限の延長も行い、物流負荷の低減やフードロス削減につなげています。

賞味期限表示を「年月」表示へ切り替え

――「物流分科会」など、物流改善のために、社内組織を積極的に立ち上げているのですね。

 

 畑谷 部門間が連携して取り組みを徹底できる体制を構築するには、取り組みの主体となる組織の存在が不可欠でした。

 

 たとえば外装表示の問題を解決する際には、どの部署や組織が主体となって進めていくのかが曖昧となっていました。各事業部門へ個別に改善を促すと、着手できる商品から取り組んでいるなど、部署間の情報共有や進捗管理の難しさから全体の優先度を付けられない状況でした。そのような経緯から「物流分科会」をはじめ「外装表示分科会」でもCLOである私が分科会長を務めています。

 

 CLOの業務としては在庫管理や需給調整についても改善につなげていかなくてはなりません。これに関しても、部署間が円滑に連携できるような仕組みづくりを進めています。

 

ローリー輸送を

「2時間ルール」対象外に

 

 ――ローリー車がメインの輸送モードとなるなど、油脂の取り扱いは他業界の物流とは異なる特殊な環境となっていますが、食用油特有の物流課題があるのでしょうか。

 

 畑谷 ローリー輸送は専門の協力会社に依頼しているのですが、食用油をローリー輸送している物流事業者は全国で約20社程度しかありません。

 

 輸送できる物流事業者が少ないため、メーカー各社が同じ物流事業者に委託しており、一度食用油を運び終えたあとに別の企業の食用油、もしくは同じ企業であっても別の種類の食用油を輸送するには、車両タンクを洗浄する必要があります。そのため、物流事業者が食用油の輸送に参入するには、求められている洗浄の基準を満たせる設備などを設けなければなりません。

ローリー車による輸送が多い

――そうした輸送力不足などの課題に対し、食用油業界としてどのような対策を進めていますか。

 

 畑谷 改正物流効率化法において設けられた「2時間ルール」の適用除外を実現しました。荷待ち・荷役時間の合計を2時間以内に収める「2時間ルール」ですが、油脂は粘度があり、とくに冬は流れにくくなるうえ、納品時にはサンプル抽出による分析結果が必須で分析に時間を要します。そのため「2時間ルール」は現実的に難しいというのが実情です。そこで、日本植物油協会(日油協)を通じて国土交通省に対し働きかけを行い、ローリー輸送に関しては「2時間ルール」の適用除外とし、実態に即した運用を行うことができるようになりました。

 

 また、日油協の正副会長である日清オイリオグループと当社、昭和産業の3社で、持続可能な物流の実現に向けた協議体「油脂物流未来推進会議(YBM会議)」を25年7月に発足しました。現在は不二製油も加わっています。この会議では、今年1月から施行された中小受託取引適正化法、本格施行が始まった改正物流効率化法、来年4月からの改正物流特殊指定を踏まえ、納品や荷役作業などにおける荷主の役割と物流会社の役割に関して、明確な境界線を決めることをテーマに掲げて、現在議論を進めています。

 

 「YBM会議」では、物流事業者と打ち合わせをして荷役作業を一覧化したのち、どの部分を荷主が担うのか、どの部分を物流事業者に任せるのかを確認する取り組みを実施しました。これをもとにさらに議論を重ねて、物流事業者側の意見の妥当性を確認し、その結論を附帯作業の書面化に活用しています。

 

物流改善の挑戦通じ「社員が能動的な姿勢に変化」

 

 ――貴社にとってのCLOの位置付け、果たすべきミッションについてお聞かせください。また、CLOとして今後、自社の物流をどのように引っ張っていければとお考えでしょうか。

 

 畑谷 荷主の基本として、物流の整流化に取り組むことはとても重要です。当社が目指すのは、適切な需給対応による安定供給と在庫適正化の両立です。

 

 当社は物流改善にあたり、この5年間で様々なチャレンジを続けてきました。社員の意識改革で言えば、業界で手を携えることで、社会の仕組みを変える活動ができるとわかったことが、良い刺激や新たな気付きにつながっているようです。これまで物流部門は営業部門や社内の関係部署からの要望に応える受け身の姿勢が強かったのですが、意識が変わることで物流改善に対し能動的な姿勢を取るようになりました。また、それまで遠く感じていた行政との距離感についても対話と改善を続けていくことで、ずいぶん近くなったと感じています。

 

 ――荷主の立場から、行政に対しての要望はありますか。

 

 畑谷 物流特殊指定などの物流に係る法規定は、食品業界だけでなくあらゆる業界を俯瞰したうえで決められています。行政には、フードサプライチェーンに関する物流課題の解決など、旗振り役となって主導していただきたいと思っています。一方的にお願いをするのではなく、業界として実情を伝えながら、ともに議論を重ねていければと思っています。

 

はたや・かずみ 1969年生まれ。91年味の素入社、08年味の素物流受注事業部長、19年J―オイルミルズ出向、21年サプライチェーンコントロールセンター長、22年執行役員

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