カーゴニュース 2025年3月4日 第5320号
グローバルでさらなる成長を実現するためには、マザー市場である「日本」で勝ち抜くことが欠かせない。NXグループで日本事業を担う日本通運は1月、「社内カンパニー制」の導入という大胆な組織再編に打って出た。その狙いや今後の経営課題について、就任2年目を迎えた竹添進二郎社長に聞いた。(インタビュアー/西村旦)
荷動きは昨年下期から回復傾向
――日本通運が担う日本事業の現況はいかがでしょうか。
竹添 2024年12月期を振り返ると、上期の日本発着の国際フォワーディング(FWD)事業は航空、海運とも物量的には回復傾向だったものの、粗利単価が低調に推移しました。また、国内のロジスティクス事業も全般的に低調だった結果、業績は低いレベルで推移しました。しかし、下期以降は、国際FWDの粗利単価が改善してきたほか、国内の物流マーケットもまだ十分ではないものの、回復傾向に転じたことで業績が上向いてきました。
ただ、国際情勢に目を向けると、ウクライナやイスラエルでの紛争が続いているほか、米国でトランプ政権が発足するなど大きな変化が続いており、それによって需要がどのように変化するのか、引き続き注視しなければなりません。しかし、マーケットがどのように変化したとしても、お客さまのサプライチェーン(SC)全体を見据え、End to Endのソリューションを提供していくというNXグループの方針に何ら変更はなく、さらに強化していきます。
その中で、日本事業においては、とくに半導体関連、モビリティ、電機・電子などの荷動きに期待しています。一方、人件費や外注費、燃料費といった各種コストのさらなる上昇が予想されています。当社としても引き続きコストを吸収する努力を続けていきますが、どうしても抑えきれない部分については、お客さまに料金改定をお願いしていくことになります。
――FWD事業については、航空、海運とも物量は回復基調が続いています。
竹添 航空物量は間違いなく回復してきました。海運はやや力強さに欠けるものの、おおむね回復傾向にあると言えます。ただ、航空は中国を中心としたeコマース(EC)関連の活発な荷動きを受けて航空機スペースが不足しており、FWD事業の利幅が縮小しています。以前の航空の需要動向は、クリスマス前や春節(中華圏の旧正月)といった繁忙期が事前に予想できましたが、近年はECの高い需要が通年であるため波動が小さくなっています。このため、仕入れ単価が年間を通じて高水準で推移しており、販売面での調整が難しくなる傾向にあります。
日本を3つのエリアに区分
――日本通運では今年1月に大がかりな組織再編を実施しました。日本事業の強じん化戦略の一環として「社内カンパニー制」の導入に踏み切りました。
竹添 社内カンパニー制は、日本全体を大きく3つのエリアに区分して、東北・北海道エリアを「Eastカンパニー」、中四国・九州エリアを「Westカンパニー」、そしてカンパニーという呼び方はしていませんが、東・名・阪の大都市圏をひとつのくくりに再編しました。
社内カンパニー制を導入した最大の理由は、各エリアによってマーケットを取り巻く環境や実態に違いがあることです。例えば、東京と東北・北海道とでは、マーケット規模や市場から求められるものが大きく異なります。しかし、当社のこれまでのビジネスや組織のあり方は、日本全国で一律のサービスを提供することが長らく根底にありました。もちろん、これまでも地域ブロック制を敷くことで、ある程度エリア事情に根差した施策を展開してきたわけですが、従来以上にメリハリをつけた取り組みを加速させていきます。
また、各エリアのマーケット特性に合わせた形でサービスを提供していくとともに、そのための経営判断もよりスピーディーに行っていきます。そうした施策展開を可能にしていくために、各カンパニーに対して権限を相当程度移譲しました。
当然ながら、会社として目指すところもカンパニーごとに違いが生まれます。East、Westの両カンパニーについては、売上よりは利益率と資本効率の向上に主眼を置き、そのための施策を打っていきます。一方、東・名・阪エリアについては、日系や外資系のグローバル顧客の意思決定部門が数多く集積しており、グローバルSCのEnd to Endでソリューションを提供していくというNXグループの戦略上からも、非常に重要なエリアとなります。そのため、両カンパニーと比較すると、アカウントマネジメントの強化による売上と利益双方の最大化に徹底してこだわっていきます。
――まず、East、Westの両カンパニーですが、トップラインを伸ばすよりも、利益率と資本効率の向上を第一義にしていくということですね。
竹添 もちろん、売上拡大と同時に利益が高まるのであれば、躊躇なく仕事を獲得してもらいます。ただ、当社グループの長い歴史の中で、このエリアには、十分に有効活用し切れていない資産、あるいは社会環境やマーケットが変化する中で、かつてほど使い切れていない資産が多く眠っていると考えています。まずはそうした諸々のアセットを有効活用していくことを第一に考えるべきであり、仮にそれが難しいという結論になれば、事業の入れ替えや一部撤退も選択肢に入れていきます。権限を移譲することで、そうした経営判断についてもこれまで以上にスピーディーに行っていきます。
――その権限移譲ですが、どの程度までをカンパニーの裁量に任せる方針でしょうか。
竹添 地域の事情や特性に合わせた組織再編や人員配置については、カンパニーが相当程度、自由に行えるように社内制度を変えました。ただ、人事制度や賃金制度については、分社化するわけではないので、現段階において変えるつもりはありません。
購読残数: / 本
恐れ入りますが、ログインをした後に再度印刷をしてください。