カーゴニュース 2025年10月2日 第5375号
岐阜県多治見市に本社を置き、東海・北陸など中部圏から関西へとスーパーマーケットを中心とした小売チェーンを展開するバローグループ。そのトップを務めるバローホールディングスの小池孝幸社長は、物流部長を経験し、現在もグループの物流事業を担う中部興産の社長を兼任するなどユニークな経歴で知られる。製造や卸売、物流などの関連業務をグループで内製化するビジネスモデルの強みや、今後の事業拡大を支える物流戦略、中部興産の成長ビジョンなどについて話を聞いた。
(インタビュアー/西村旦)
「製造小売業」への進化と事業多角化で急成長
――まずはバローグループの事業概要をご紹介ください。
小池 東海・北陸の中部地方を中心に、スーパーマーケットを主軸としてドラッグストア、ホームセンターなど小売チェーンを展開しています。現在、全国に1471店舗を展開しており、2025年3月期のグループ売上高は8544億円に達しています。1兆円の絵もだいたい見えてきました。
バローグループの特徴をひと言で表現すると自前主義と言えます。川上から川下に至るプロセスを内製化することで、利益の残り方を自分たちでコントロールしていく戦略です。また、製造小売業を標榜し、店舗で販売する商品の製造・加工から流通、販売までを一貫してグループ内で完結できるビジネスモデルを志向しています。「利は元にあり」ではありませんが、最終出口である「店」を強くするためには、その裏側にある仕組みをきちんと構築することが大事になります。そのために物流も自前で手がけてきましたし、例えば店舗清掃やメンテナンスを行う会社もグループ内に持っています。その結果、他の小売チェーンと比較して、グループ子会社の数も多く、小売部門以外の売上や利益の割合が高いことが特徴のひとつです。
――「何でも自分たちでやる」という自前主義的な企業文化が生まれた理由や背景には何があったのでしょうか。
小池 当社グループは岐阜県恵那市が創業の地で、いわば地方を基盤に成長してきました。このエリアは、例えば名古屋などの大都市とは違い、卸の機能も弱く、調達に関するサービスが十分とは言えませんでした。ですから、例えば名古屋の卸売市場で購買した商品も、当時はここまで届けてもらえず、自分たちで取りに行くしかありませんでした。また、商業集積をつくり出そうにも、組む相手先がいないため、自分たちで何でもやる必要があったわけです。その地域の皆さんに対して「何でもバロー」という状態をつくり上げていく過程で、M&Aなどの手法も駆使してドラッグストアやホームセンターなど多角化も進みました。さらに、PB(プライベートブランド)の開発や製造・加工の内製化などを進める中で、より規模を拡大することによるマスメリットに重点を置くようになったわけです。
ただ、今後の大きな課題は、人口動態の変化です。我々小売業は個人のお客様を相手にしている商売であり、どこに人口が集積しているかを抜きにして経営戦略は考えることはできません。そこで、これまでは基本的に東海・北陸を中心とした中部圏で事業を展開してきましたが、今後は「関西1000億円構想」「関東500億円構想」を掲げ、より人口が多い関西や関東への本格的な進出を開始しているところです。
創業以来、物流のプロフィット化を追求
――物流についても外部委託をせず、物流センターの設計施工や運営も自前でやってきたことが、他の小売チェーンにない大きな特徴です。バローグループにとって「物流」とはどのような位置づけなのでしょうか。
小池 創業以来、一貫してぶれずに続いているのは「物流はコストセンターではなく、プロフィットセンターだ」という考え方です。「物流はコストである」という考え方に立ってしまえば、そこに投資するという経営判断は生まれません。逆に、物流を「利益を生み出す源泉」ととらえれば、そこに投資をして基盤を強化しようという発想になるわけです。さらに、利益を生み出すためには、外部に丸投げするのではなく、自分たちでできることとパートナーにお願いすることを上手に組み合わせることで利益を残していくという判断にもつながります。配送も店舗向けに運ぶだけではなく、その前の工程であるメーカーや卸からの集荷についても自社で手がけたらどうだろうかといったように、他の小売チェーンとは違った発想で物流を考えてきた経緯があります。
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