カーゴニュース 2025年10月2日 第5375号

インタビュー
強い小売には強い「物流」が不可欠
バローホールディングス
取締役社長 小池孝幸 氏

〝自前主義〟で培った物流ノウハウで外販拡大へ

2025/10/01 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 インタビュー

運送会社のM&Aで一貫物流サービス提供へ

 

 ――物流子会社の中部興産について伺います。昨年4月に石川県に本社がある鷺富運送を子会社化しました。

 

 小池 鷺富運送は、メーカーから出荷される商品を卸まで配送するのが主な事業領域で、チルドなどの温度管理物流を得意としています。一方、中部興産は一部で集荷業務を手がけてはいるものの、基本的には自社物流センターの運営とセンターから店舗までの配送が中心であり、両社を組み合わせることで川上から川下までを一貫して俯瞰し、モデル化できる機能が揃うことになりました。

 

 今後は、バローグループとして、物流に課題や困り事を抱えている食品をはじめとする中小メーカーの物流合理化に貢献するとともに、メーカーから店舗までのサプライチェーンの効率化にも挑戦していきます。我々には小売企業としてサプライチェーンの最終出口である「商品を売る力」があります。だからこそ、当社がイニシアティブをとり、物流全体をコーディネートすることができると考えています。

 

マテハン機器の設計やレイアウトも自前で

中部興産は「ポテンシャルの塊」、外販拡大へ

 

 ――その戦略を進めることが中部興産の外販拡大につながるということですね。

 

 小池 さらに拡大していきます。バローグループの物流だけで固定費を負担するよりは、他社の商品を一緒に運ぶほうがコストメリットは上がりますし、物流機能をシェアすることで関係者すべてがWIN―WINになります。物流というリソースの有効活用を目指すフィジカルインターネットの考え方にも沿うものです。

 

 実は、中部興産のトラックが競合である小売の店舗納品を行っている事例はすでにあります。以前では考えられなかったことですが、各社がドライバー不足の深刻化で輸送力の確保に困っている状況にあり、多くの企業がこだわりを捨て、実利をとるようになっています。こうした取り組みは今後も拡大していけると確信しています。

 

 また、中小メーカーの物流を受託する場合も、バローグループ向けの商品の引き取りだけでなく、物流全体を丸ごと請け負うことでメーカーが抱える困り事の解決につながらなければ意味がありません。今後はそうした取り組みを広げていけるよう、さらに力をつけていきたいと思っています。

 

 ――中部興産は物流事業者として大きな成長の可能性を秘めているように思います。

 

 小池 現在の売上高は230億円程度ですが、おっしゃる通り、ポテンシャルの塊だと思っています。物流子会社としてバローグループの物流効率化に貢献していく一方で、今後は事業会社として世に送り出していきます。

 

 中部興産は、物流インフラに設計施工、庫内運営の仕組みづくりやマテハンの導入についても社員がCADで設計図を引くなど、ほぼすべて自前でやってきましたが、そのやり方は間違いではなかったと思います。M&Aをした小売企業の物流を分析し、我々が培ってきたノウハウを活かして効率化を進めた結果、物流部門で大幅な利益改善を達成する事例が数多く出てきています。自分たちが時間をかけて磨いてきた物流手法が正しかったのだと再認識しており、自信を持って事業拡大にチャレンジしていきます。また、物流業界の様々な方々と連携していくことで、この業界の面白さをもっと追求していきたいと思っています。

EVトラックの導入も進む

小池 孝幸(こいけ・たかゆき)

 

 1972年生まれ。岐阜県可児市出身。名古屋大学文学部卒業後、95年4月バロー(現バローHD)入社。社長室長、物流部長などを経て、2018年4月中部興産社長(現任)。19年6月バローHD取締役、23年6月バローHD社長に就任(現任)

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