カーゴニュース 2025年10月7日 第5376号
三菱商事ロジスティクス(MCLOGI、本社・東京都千代田区、田中鉄社長)は、“荷主目線”を持つ商社系物流会社の強みを活かし、社会課題に対応したサスティナブルな物流ソリューションの提供に注力している。4月に社長に就任した田中社長に「物流の枠にとどまらない」事業展開について聞いた。(インタビュアー/小嶺俊輔)
商社系物流会社として荷主と目線を共有
――これまでのキャリアをご紹介ください。
田中 1993年に三菱商事に入社し、「商社らしい仕事がしたい」と思い、物流部門を志望しました。結果として、配属先は「保険部」となりましたが、貿易取引や資源プロジェクトに関する保険業務に携わる中で社会人としての基礎を学べたように思います。15年ほど保険業務を経験した後、倉庫開発やタイヤ事業にも関わりました。三菱商事ロジスティクスへの出向は今回が2度目です。2014年からの1度目の出向ではアパレル物流の役員を担当しました。昨年から2度目の出向となり、経営企画の担当役員を務めた後、今年4月に社長に就任しました。
――MCLOGIに2度も出向するというご縁があったのですね。商社にルーツを持つ会社として自社の特徴、強みをどうとらえていますか。
田中 国際フォワーディングを中心として、広範囲のエリアや貨物をカバーしている点が強みと言えると思います。食品、アパレル、雑貨、自動車、化学品など当社が接点を持っている産業は幅広く、扱っている貨物も大型重量物から小口の軽量品まであり、荷姿も様々です。輸送モードについても、国内トラック輸送から国際輸送まで多岐にわたり対応できます。
当社のビジネスモデルは、倉庫や車両の保有を最低限に抑える、あるいは持たない〝ノンアセット型〟です。一方、商社系というルーツがあるため、物流会社でありながら「荷主の目線」を持っており、その目線を顧客である荷主に共有し、顧客目線で物流設計を行うことを得意としています。
――ノンアセット型ということはソフト、とくに「人材」が競争力の要となりますね。
田中 もともと当社は、06年に倉庫事業を手掛ける菱光ロジスティクスと国際貨物輸送事業を手掛けるエム・シー・トランス インターナショナルが合併してできた会社です。合併当初は倉庫系の人材と国際輸送系の人材が分かれていましたが、最近は人材の融合が進んでいます。様々なノウハウを持つ社員がいるため、仕事をする中で何か問題が生じても、社内を探せば誰かが答えを持っている――というような環境となっています。
また、社員の平均年齢が約39歳と若く、毎年10人弱を新卒採用しています。女性の活躍も進んでおり、管理職の中でも部長級の40%が女性です。女性部長は産休育休を複数回経験した社員や、契約社員から正社員になったケースもあり、多様なライフイベントを経験した上で、現在のポジションに就いています。
若手社員との交流も盛んで、座談会や懇親会を開催して社内のコミュニケーションを深めています。私自身も週2回、社員を6人ほどずつ集めて昼食会を行いました。私との交流はもちろんですが、同じ昼食会に参加した社員同士が交流することで、部署や勤続年数にかかわりなく、人間関係を構築していくことを期待しています。
――近年、物流業界を取り巻く環境は大きく変化していますが、事業環境についてどのようにとらえていますか。
田中 社会課題や環境課題に対応して、サスティナブルな物流を実現することが求められていると感じます。具体的には、CO2の排出量やドライバーの労働時間などに配慮した物流が荷主から選ばれるようになっています。多少コストは上昇しても、将来的な人手不足や環境問題への対応という観点から、モーダルシフトなどの需要が高まっています。
当社の社員にとっても、自分たちがやっている仕事が社会課題の解決になるということは励みになり、やりがいにつながっているように思います。物流業界では社会課題への対応を(負担の増加など)ネガティブな要素として受け止めているところもありますが、当社としては新しいビジネスモデルの構築の可能性や、社員のモチベーションの観点から、むしろプラスととらえています。
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