カーゴニュース 2025年11月27日 第5391号
物流不動産市場を読む!
大都市圏だけでなく地方にも大量供給が続き、新規デベロッパーの参入も相次ぐ物流不動産市場――。特殊倉庫の供給や多用途化など社会課題や環境変化を踏まえた開発が進む一方、建築費の高騰などを背景に、開発縮小の流れも予測されており、市場の先行きは不透明だ。現在のトレンドを探るとともに直近の代表的な事例を知ることで、物流不動産業界の潮流が見えてくる。
トレンド①
首都圏の供給量は27年に鈍化、〝見えない空室〟も発生?
大量供給が続いていた物流不動産市場もややピークアウトしつつある。CBRE調査によると首都圏におけるマルチテナント型施設の供給量は2023年には90万坪を超えて過去最大となり、25年度は約46・5万坪、26年度にも52・5万坪の開発が見込まれている。大量供給による競争激化で一部エリアでは賃料の上昇に頭打ちも見られる。しかし、今後は建設費の高騰などを理由とした開発計画の見直しにより開発ラッシュにブレーキがかかり、供給の鈍化と賃料の上昇を予測する分析もある。
同社が2月に発表したレポートでは、首都圏の物流施設は26年後半には新規供給量が減少傾向に入ると指摘。空室率の低下により「賃料が上向く」可能性を示した。さらに、8月に発表した首都圏の物流施設需要では、27年における首都圏のマルチテナント型施設の新規供給量は約15・2万坪と15年ぶりの低水準を記録すると予測。一方、需要は引き続き底堅いことから、同年には需要超過に転じるとしている。
需給バランスについては必ずしも楽観論だけではない。直近の首都圏の大型物流施設における空室率は10%を超える水準となっている。さらには、空室率データに反映されない〝潜在空室〟の存在も指摘されている。たとえば、物流会社が施設を賃借後の貨物の集荷が捗らなかったり、転貸先が見つかっていないケースもあり、これらは実質的には〝空室〟と言える。このほか、いったん賃借したがその後、テナントが施設を退去している場合もあり、需給バランスの実態を把握するには、こうした〝見えない空室〟にも注意を払う必要がありそうだ。
トレンド②
ドライは供給過剰?特殊倉庫の開発が活況
危険物倉庫や冷凍冷蔵倉庫といった特殊倉庫の開発がにわかに活発だ。近年はドライ倉庫は供給過多ぎみでリーシングが難しくなっていることに加え、建築費が高騰する中で特殊倉庫は高付加価値施設として賃料に転嫁しやすい。潜在需要も見込まれ、コストの回収に期待が持てることから、デベロッパー各社がこぞって開発に乗り出している。
リチウムイオン電池や半導体材料などの保管需要を見込んで開発が増えているのが危険物倉庫だ。消防法の制約により土地利用の効率性に課題があるものの、原則として平屋建てであることから開発コストを抑えることができる。また、ドライ倉庫に併設し、〝セット貸し〟によりリーシングに成功する例も見られる。ただ、足元ではEVなどに利用される車載型リチウムイオン電池の荷動きが鈍化傾向にあり、需要エリアが限られていること、リチウムイオン電池の保管規制緩和の動きなどから、〝特需〟への期待はややしぼみつつある。
冷凍食品の保管需要増などを追い風に、冷凍冷蔵倉庫の開発も増えている。既存倉庫の老朽化や2030年の冷媒フロン規制への対応が求められる中で、建築費の高騰などを理由に、自前で建設せず賃貸型を利用する事業者が潜在的に見込まれることも活況の要因だ。ただ、賃貸用冷凍冷蔵倉庫の賃料はドライ倉庫の2倍とも言われており、食品という単価の安い貨物を扱う事業者が高い賃料を払って採算を取れるかどうかも課題とされる。高い賃料に見合うビジネスモデルを展開しているテナントの取り込みがカギとなりそうだ。
トレンド③
デベロッパーが〝実物流〟参入、新たなビジネスモデル構築
従来、「物流不動産=不動産賃貸業」として営業倉庫との棲み分けがなされてきたが、業際があいまいになりつつある。デベロッパーが〝保管〟サービスの提供など実物流に乗り出す動きが見られる。物流課題への対応に向けたテナント企業のニーズを把握し、施設戦略に活かすとともに、自前のアセットを利用した新たなビジネスにつなげるなど「物流サービスプロバイダー」としての存在感を示しつつある。
他社に先駆けて賃貸型冷凍倉庫の開発を進めてきた霞ヶ関キャピタルでは、冷凍冷蔵倉庫「LOGI FLAG TECH」の各施設で、グループの事業会社であるX NETWORK(クロスネットワーク)による冷凍保管サービス「COLD X NETWORK」を提供。中長期のスペース確保型に加え、1日・1パレットからの従量課金制も展開し、短期間の冷凍保管需要に対応する。
三井不動産は8月、コンサルティングなど物流課題の解決支援ソリューションを提供する「MFLP&LOGI」サービスをシリーズ化し、本格展開していくと発表した。このうち、「MFLP&LOGI Sharing」は入荷から出荷までのワンストップ物流サービスを従量課金制で利用できる。物流不動産のアセットオーナー自らが物流サービスを手掛けるようになり、物流会社と競合する場面も出てきそうだ。
トレンド④
付加価値創出へ、テナント向けサービス広がる
テナントの課題解決や物流効率化支援などに向けて、デベロッパーが施設を通じてソリューションを提供するテナント専用サービスも増えてきた。単なるスペース貸しにとどまらず、付加価値をつけることで、リーシングで差別化を図るとともに、顧客満足度の向上につなげる狙いだ。
とくに積極的な取り組みを進めているのが日本GLP。同社が提供する「GLPコンシェルジュ」は輸配送網や人材、スペース活用、備品手配など、テナント企業の課題に対し、300社以上のパートナー企業から最適な企業を紹介する。
また、8月には佐川急便、JPロジスティクスと連携し、「GLP ALFALINK相模原」と「GLP ALFALINK流山」で「ALFALINK共配」を、両施設のリピートカスタマー向けに開始。両社がそれぞれのトラックで納品配送していたリピートカスタマーの荷物について、JPロジスティクスの一部荷物を佐川急便に集約することで、配送を効率化する。今後は全国への取り組み拡大を視野に入れる。
東京流通センター(TRC)では同月、テナントやテナント候補となる企業向けに、CLO(物流統括管理者)の役割や選任の方法などの情報提供や企業間マッチングなどを支援する「CLOサポートユニット」を発足した。物流不動産の大量供給により「大家」業は必ずしも安泰ではなく、継続的に選ばれ続けるための能動的なプロモーションが求められている。
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