カーゴニュース 2026年1月20日 第5403号

インタビュー
これからも「選ばれる宅急便」であり続ける
ヤマト運輸 代表取締役社長 社長執行役員
阿波誠一 氏

2026/01/19 17:00
全文公開記事 FOCUS 宅配・ラストワンマイル インタビュー

「運ぶ+α」で地域に不可欠な存在に

 

 ――サービスを開始した当初はCtoC、つまり個人間での荷物のやり取りが中心でしたが、その後、宅急便を取り巻く市場環境は大きく変化してきました。最大のターニングポイントとなったのはインターネットによるeコマースの進展だったと思います。

 

 阿波 それは間違いありません。いまや宅急便で運んでいる荷物の9割がECを中心とした企業発であり、サービス開始当初に想定していたCtoCの荷物は1割もないのが現状です。2000年以降のインターネットの隆盛によって企業発のBtoC荷物が爆発的に増え、現在も増え続けています。経済のEC化に伴い、日本全体で見ても輸送の多頻度小口化が進んでいるといえます。

 

 その一方で、地方を中心に少子高齢化を背景とした労働力不足の流れは避けられず、輸送力の低下が物流業界全体で深刻な課題になっています。当社にとっても、輸送力の確保は大きな課題です。加えて、大都市部に出荷拠点がある企業発の荷物が増えることで〝下り〟の荷物が過多となり、逆に〝上り〟が薄くなるというインバランスの傾向が顕著になっています。

 

 ――そうした難しい課題にどのように向き合っていきますか。

 

 阿波 EC荷物の拡大が続く一方で、ドライバー不足による輸送力低下という流れは今後も続くでしょう。とはいえ、我々は社会的インフラとしての物流を支える立場として、全国の隅々まで正社員ドライバーによるネットワークを張り続けていかなければなりません。不採算地域だからサービスをやめるとか、ドライバーがいないから土日の配達は休みましょうとか、そのようなことを簡単に言うことはできませんし、言うつもりもありません。

 

 ただ、将来にわたって宅急便事業だけでネットワークを維持し続けることができるのかと問われれば、おそらく難しいと思います。人件費をはじめとする固定費はこれからも増え続けるなかで、地方での荷物は減少していきます。こうした難しい課題に解決策を見出し、いかに持続的なネットワークを維持することができるか、この50周年を機にこれまで以上に真剣に考えていく必要があります。そのソリューションのひとつとなり得るのが、「運ぶ」という機能を通じて地域の社会課題の解決に貢献していくことだと考えています。

 

 例えば、北海道の奥尻島では、人口わずか2000人のなかで当社は直営の営業所を置いています。人口減少や住民の高齢化が進み、荷物の取り扱いは減少が続くなかで、ネットワークを維持するために何ができるかを考えた結果、サツドラホールディングスと連携して、まずは営業所をサテライト店舗として日用品の販売を開始し、次に島内での移動販売も始めました。さらに、地域の足となるべく、宅急便のSDがライドシェア型の「客貨」混載輸送の実証運行も開始しました。また、山形や愛媛などでは運転免許を返上してしまった生産者に代わって、農産物を近くのJA農協の集荷場まで運ぶサービスも一部で提供しています。

奥尻島内で活躍する移動販売車
島民の足となっているライドシェア型客貨混載輸送

 こうしたサービスを提供できるのも、正社員ドライバーによる宅急便ネットワークが各地域にしっかり根付いているからです。今後も地域の社会課題に対して「運ぶ+α」の価値を提供していくことで、地域にとって不可欠な存在としてビジネスをもう一段成長させることできる可能性があると思っています。

 

 24年1月に発生した能登半島地震では、輪島、珠洲、七尾、穴水の4ヵ所にある当社の営業所も被災しましたが、昨年11月に「石川珠洲営業所」の本格的な営業を再開するなど4営業所体制を維持していきます。復興に向けて地域とともに新たな価値を創造していこうという当社の決意の表れだとご理解いただければ幸いです。

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