カーゴニュース 2026年3月12日 第5418号
保税業者に対する「業務改善命令」を創設
――ワーキンググループでの議論を経て「保税業者に対する業務改善命令」が創設されるということです。その背景と概要、導入のスケジュールについてご説明いただけますでしょうか。
寺岡 越境ECの拡大により輸入貨物が急増するという大きな変化において、保税地域で貨物管理を行う保税業者の役割は一層重要なものになっています。その一方で、一部の保税業者で輸入許可を受けていない貨物を保税地域から搬出した事案や、従業員による申告外物品の抜き取りが疑われる事案などの不正事案も発生しており、対策を講じることが急務になっています。
現行制度では、保税業者の適正な業務運営を確保するために、税関は保税業者に対して、業務の改善を促すための「助言・指導」を行っています。また、違反行為に対しては、外国貨物等の搬入停止や許可取り消しといった行政処分を行います。この処分は保税業者にとって相当厳しい処分です。保税業者としても、BtoCの荷物が急増し、迅速な通関と搬出処理を行いつつ、コンプライアンスを守るということに、大変なご苦労があると認識しています。もう少しきめ細やかな指導が必要であるとの考えから、「助言・指導」と「搬入停止・許可取り消し」の中間に、新たな行政措置として「業務改善命令」を創設したいと考えています。
保税業者の改善状況に応じて、税関と保税業者が個別に丁寧なやり取りを重ねながら、きめ細かなフォローができれば、不正事案の再発防止にもつながり、保税業者や輸入者の利便性にも寄与します。まずは法律を成立させなければなりませんので、改正法の公布から一定の周知期間を設け、できるだけ速やかに導入したいと思っています。この「業務改善命令」が創設されることで、保税業者の日常業務が大きく変わるということではありませんが、適正な業務運営を行うための社内体制の整備や、適正な料金収受も含めた取り組みが必要になってきます。
通関業務料金、高度な業務に見合うように
――ワーキングループの中では、通関業者を取り巻く環境やその役割についても議論されました。
寺岡 国際通商環境が厳しく、かつ複雑になる中で、通間業者の役割はますます重要になっています。通関士は国家資格であり、専門知識を用いて関税の適正な徴収や貿易の円滑化、社会悪物品の流入阻止などを実現し、いわばわが国と海外を結ぶサプライチェーンにおいて、必要不可欠な役割を果たしていると理解しています。
ただ、通間業者の役割の重要性が日々高まっている一方で、社会からの要請に見合う水準の料金設定を行えているのか、高騰する労務費の適正な転嫁が進んでいるのかといった点についてはかなり課題が多いとかねてから感じていました。とくに中小規模の通関業者は厳しい経営環境に直面しているという指摘もあります。
通関業者が社会から求められる役割をきちんと果たし、国際物流の発展に引き続き寄与していくには、経営環境の改善が急務だと考えています。専門性が豊かな人材を確保していくことも重要で、高度な業務に見合った通関業務料金を設定する必要があります。加えて、労務費等のコストの上昇を通関業務料金に適正に転嫁していくことは、極めて重要です。そうしたことから今回初めて、2030年度に向けた「総合物流施策大綱」の中にきちんと通関業を位置づけていただくよう、働きかけを行いました。通関業者の経営環境の改善の必要性を広く周知したり、適正な業務運営を確保するための環境整備に向けて、関税局としてできることに取り組んでいきます。
――物流業界を見てみると、たとえばトラックでは「最低料金」のようなものが定められようとしています。通関業務料金はかつては「最高額」が設定され、17年の法改正で自由化されたという経緯がありますが、今後、通関業務料金についても最低料金を設定することなどは考えられるものでしょうか。
寺岡 通関業者の皆様からお話を伺うと、通関業単独で事業をされている会社もゼロではありませんが、ほとんどの会社では物流事業の一部として通関業を行っていて、その料金については物流事業全体の中で定めているケースが多いようです。
いずれにしても、関税局としては、労務費等のコストを通関業務料金へ適切に転嫁できる環境整備を推進していく必要があると考えていますが、そのための具体的な料金設定のあり方としては、そうした観点も踏まえつつ、個々の通関業者の付加価値向上に向けた創意工夫を促すため、提供するサービスの内容などに応じて自由に設定できることが重要なのだろうと考えています。
――通関業界特有の商慣習に、輸入者に代わって通関業者が関税・消費税を立替払いするという、いわゆる「関税等の立替払いの問題」があります。これについても通関業者からは「法律で規制してほしい」との要望があります。荷主と通関業者の適正取引を監視する「Gメン」を設置してほしいという声もありますが、いかがでしょうか。
寺岡 立替払いは通関業者と輸入者との間の民間の契約に基づくものですが、関税局としてまずはこれをできるだけ少なくしたいという通関業者の皆様の要請にお応えするため、納期限の延長制度や輸入者の口座から直接関税等を納付できる制度を設けており、今後もその利用促進を進め、さらに踏み込んだ対応が必要かどうかについては慎重に見極めたいと思います。
なお、公正取引委員会からは、輸入者が優越的地位を利用して不当に立替払いを行わせることは独占禁止法上の不公正な取引につながるおそれがあると指摘されており、貿易関係者に対し周知も行われています。通関業者が果たしている役割が社会に認知され、適正な業務運営を行える環境が整備されることがまずは大事であり、通関士の専門知識などの価値が正当に荷主から評価され、それに見合った料金が設定されていくというのが望ましいあり方だと思います。
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