カーゴニュース 2025年9月30日 第5374号
ワコール流通(本社・滋賀県守山市、新瀬幸司社長)は、ワコールの国内販売物流の中核を担っている。BtoBとBtoCの物流拠点・機能を統合した守山流通センター(滋賀県守山市)は、ワコールの自社ECビジネスの強化を物流面から支えるため、SKU処理能力を引き上げていく考えだ。新瀬社長に重点取り組みを聞いた。
(インタビュアー/石井麻里)
「一人ひとりの成長を促す」人事制度へと刷新
――これまでのキャリアをご紹介ください。
新瀬 1991年にワコールに入社しました。大手量販店の営業部門を長く担当し、マーケティング戦略部長を経て、2024年4月にワコール流通の社長に就任しました。大手量販店の営業を担当していた11年に東日本大震災が発生し、その時に必要なモノを、必要なだけ、正確に届ける物流の重要性をリアルに実感しました。現職に就いて1年半が経ちましたが、もともと物流に興味があり、大きなやりがいを感じています。
――物流会社に来てどのような印象を持たれましたか。
新瀬 ワコールが扱っているインナーウエアのマーケットはニッチです。それに比べ、物流業界はマーケットの裾野が広く、一大産業といっても過言ではありません。そこに身を置けることに、わくわくしています。また、インナーウエアのマーケティングはお客様一人ひとりの嗜好やライフスタイルなどパーソナルな領域を掘り下げていくものですが、物流は真逆でよりダイナミックで、社会全体の課題にも直結しています。倉庫の現場で様々な作業によって商品に付加価値が加えられていく、まさにその瞬間を目の当たりにし、新鮮な思いがしました。
――就任にあたってまず取り組んだのが、人事制度改革だったということです。どのような経緯があったのでしょうか。
新瀬 ワコールが希望退職を実施した直後のタイミングで、私はワコール流通の社長に着任しました。ワコールから出向していたワコール流通の管理職も対象となり、私の着任時には3割のポストが「兼務」という状況でした。短期的には物流業務を正常化すること、長期的には自前で社員を採用・育成・役割任用するというサイクルを早期に構築することが、着任早々の私に突き付けられた課題でした。自分たちのことは自分たちで決めていこう――。そうした言葉が自然と浮かびました。
当社は100%物流子会社という立場で、親会社の要求に応え、精度の高い、きめ細かな業務運営を行っており、それが当社の強みでもあります。その反面、自らが想像力を発揮し、仕事を創造していくといったことはやや不得手な印象です。ワコール流通は社員の一人ひとりが自ら成長し、それによって会社として成長を目指すべきだと考えました。
管理職から現場の主任に至るまで全社員に対し、個別のヒアリングを春と秋に実施し、私自身のワコール流通に対する思いを伝えたうえで、「あなたにとって、いい会社とはどんな会社ですか」とストレートに尋ねました。その結果、横並びではなく成果に応じた評価や、役割に応じた処遇を求める声もあり、心強く感じました。次年度からの導入を見据え、即座に人事制度改革に着手することにしました。
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