カーゴニュース 2025年9月30日 第5374号

インタビュー
BtoC強化へSKU処理能力を引き上げていく
ワコール流通 代表取締役社長 新瀬幸司 氏

物流子会社としてトップラインへの貢献目指す

2025/09/30 07:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 インタビュー

「係長」が中心となって会社を動かしていく

 

 ――人事制度改革の狙いについて詳しくお聞かせいただけますか。

 

 新瀬 社員からの意見も踏まえ、新しい人事制度のコンセプトを「やりがいがあり、働き続けたい会社」と定め、人事制度を一新しました。採用・育成・役割任用を自前で行えるようにするには、自己成長を促すことが重要です。それには権限を現場に委譲するとともに、全員が伸び伸びと仕事ができるような職場環境にしなくてはいけません。物流の改善は、現場からのボトムアップなしには生まれません。説明会も複数回実施し、そうしたことを社員にお話ししました。

 

 新しい人事制度では、基本給をベースアップしたうえで、メリハリのある評価と処遇をとりいれ、人の成長にかかわる役割任用者に対しては役割手当をプラスに改定しました。これからは「流通センター長」や「課長」ではなく、「係長」が中心となって会社を動かしていくんだ――人事制度はそうした意図を込めて設計しました。

 

 ――あえて「係長」にフォーカスされたのがユニークですね。なぜ「課長」ではなく「係長」なのでしょうか。

 

 新瀬 物流の改善には現場をきちんと見ることが重要です。「課長」になると、現場に入ることが難しくなります。管理職と現場のミドルの立場にあるのが「係長」です。社員全員と面談し、社員の成長、ひいては会社の成長を促すには、「係長」がカギになると直感しました。「係長」の中から、会社の次世代を担う人材が自前で育っていくことを期待しています。

 

 ――ワコール流通として求める人材像はありますか。

 

 新瀬 当社の社員は、ワコールの商品の細かい品番や作業内容については非常に詳しいのですが、社会や物流業界全体を見渡し、いま起こっていることを自分ごとにする意識が薄いところがあります。ワコール流通の社員を、物流業界で対外的に通用する人材に育てたいと思います。

 

 なお、今期のキーワードとして「風通しのいい会社」を掲げています。社員には、会社をよくするための意見はどんどん発言してほしいと促しています。私自身は、社員が自律的に正しく、はやく判断できるように、人事以外の情報はできるだけオープンにすることを心がけています。組織もシンプルに再編成したので、情報の伝達にスピード感が出ることを期待しています。会社や業界の情報が現場と共有されていれば、社員はおのずと正しい判断ができるようになります。社員の変化の兆しが随所に見られ、会議でも意見が増えてきている実感があります。

 

 ――人事制度改革を実行に移してみて、何か課題はありますか。

 

 新瀬 組織をシンプルかつコンパクトに再編成したのですが、兼務ポストは少し残ってしまいました。これに関しては、じっくりと社員の成長を見極めていきたいと思います。

 

アセットライト化へSKUの“削減”を提言

 

 ――23年11月に公表したワコールグループの中期経営計画リバイズにおける、ワコール流通としての取り組みは。

 

 新瀬 中計のおもな取り組み事項のうち、ワコール流通とかかわりが深いのは、「収益力の改善」、「アセットライト化の推進」の2つです。

 

 「アセットライト化」に向け、物流だけで在庫回転率を上げようとすると、リードタイムの短縮など現場の負荷が大きくなり、持続的ではありません。そこで私は昨年から、ワコールに対してSKU(商品の最小管理単位)の“削減”を提言しています。守山流通センターでは現状、10万SKUを取り扱っていますが、品数を減らせば資産効率やオペレーション効率の改善につながります。ビジネス上も品ぞろえの範囲を狭めることで、お客様への品切れのリスクを軽減できます。

 

 在庫は「量」を減らすことももちろん大事ですが、SKUを減らし、単品管理スペースを減らさなければ、施設の有効活用につながりません。具体的に申しますと、守山流通センターの在庫保管エリアと商品仕分けエリアは面積比で40対60ですが、在庫枚数比は80対20です。SKUが多ければその分商品仕分けエリアを確保しなければならず、SKUを絞らないことにはスペースの生産性が上がりません。この感覚は「物流の現場」を見ていないと、なかなか理解しにくいと思います。

 

 お客様との接点といえば従来は「店頭」でした。今後、BtoCの比率が高まれば、お客様への個配業務を担う流通センターが、一人ひとりのお客様との「接点」になります。商品の付加価値やブランド価値を高めていくためにも、自前の流通センターを持っていることの意味は大きくなると思います。

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