カーゴニュース 2025年9月30日 第5374号

インタビュー
BtoC強化へSKU処理能力を引き上げていく
ワコール流通 代表取締役社長 新瀬幸司 氏

物流子会社としてトップラインへの貢献目指す

2025/09/30 07:00
全文公開記事 荷主・物流子会社 インタビュー

 ――守山流通センターを増築し、BtoBとBtoCの物流拠点・機能を一元化しました。流通再編の進捗をお聞かせください。

 

 新瀬 2022年の流通再編のポイントは、「卸売、小売(直営店)、ECの3つの在庫を一元化」、「ワコール自社ECの強化」、「外部流出費用の低減」、「マテハン機器導入による生産性向上」の4つでした。

 

 従来、ワコールの自社ECの物流業務は、守山流通センターと伏見流通センター(京都市伏見区)から滋賀県内にある3PL事業者の倉庫に横持ちし、その3PL事業者が出庫・梱包・個配を担っていました。流通再編では守山流通センターを増築し、各流通チャネルの在庫を一元化するとともに、3PL事業者を庫内に誘致することでEC業務を守山流通センターに取り込みました。コロナ禍以降、複数の購買チャネルをお客様が使い分ける傾向が顕著になり、流通チャネルによって同じ商品の在庫やディストリビューションを分けると非効率です。BtoBの在庫とBtoCの在庫を一元化したことは正しかったと思います。

増築した守山流通センター

 ワコールの自社ECは順調に伸びており、守山流通センターの現状の設備で1・7倍程度の物量に対応できる手ごたえを感じています。今期から当社が外部に借りている倉庫は返上し、内製化による外部流出費用はゼロになりました。

ストックエリア(上)とピッキングエリア

BtoBでは納品回数やリードタイムの見直しを

 

 ―――マテハン機器の導入をはじめDXの進捗はいかがでしょうか。

 

 新瀬 守山流通センターは増築により、庫内の距離が150mから240mに延びたため、2階から5階にAGVを導入し、倉庫の横移動の自動化を図りました。ご覧の通り、AGVはフル稼働しています。従来、マテハンの導入の基準は、人がやるよりも機械の方がすぐれていなければならないという暗黙の前提がありました。ただ、少子高齢化により、これからは確実に人口が少なくなりますので、多少コストがかかっても、あるいは人が行うよりも難があったとしても、いずれ機械に置き換わっていかざるを得ない時代になっていきます。一部には人がやった方が融通が利くという声もあるのは事実ですが、私としては合格点の評価をしています。

AGVを導入

 また、倉庫における業務最適化のために導入した3Dシミュレーションソフトは継続的な業務改善につながっています。今後はデバンニングの自動化・機械化、個配業務での新技術の活用も検討中です。

 DXは課題にも直面しています。ワコールの商品はすべてRFIDが付いており、「読み取り率が100%であろう」という目算で守山流通センターの業務フローが設計されました。ところが誤算がありました。女性用のインナーウエアは積層状態で管理されていることが多く、タグが束になっているとRFIDの読み取り精度が落ちるケースがあります。ワコールの流通は卸向けが主力ですので、商品の誤識別はお取引にマイナスの影響を与えます。したがって、読み取り率が100%でなければ、手作業で確認しなければなりません。RFIDの物流での活用には課題がありますが、ここで途絶してしまうと、今まで取り組んできたことがムダになってしまいます。いったん範囲を限定し、店頭や棚卸での活用の可能性について今後も研究を継続していく方針です。

 

 ――改正物流法が施行され、物流効率化への社会的要請が強まっています。ワコールとしての物流課題は。

 

 新瀬 流通チャネルとしてBtoCの比率が高まり、個配が増えていくことが予想されます。従来であれば「百貨店1店舗に100枚届ける」のが、「100人に1枚ずつ届ける」ことになるわけですから、当然、効率は悪化していきます。

 

 卸、百貨店・量販店向けのひと箱あたりの入数は24年度にコロナ禍前の19年度比87%まで下がっており、こちらも効率が悪くなってきています。1時間あたりの処理枚数(生産性)は、個配業務は卸向けの0・49倍で約半分です。個配が増えればそれだけ効率が悪化しますので、既存のBtoBの流通では納品回数の集約やリードタイムを確保することにより荷量をまとめ、ひと箱当たりの充填率を向上させる必要があります。この点については粘り強くワコールに理解を求めていきます。

 

 ――改正物流法では荷主として荷待ち・荷役時間の削減、トラック事業者との適正取引などが求められています。

 

 新瀬 守山流通センターは30台分のトラックバースを有しています。長い荷待ちは発生していませんが、それらをきちんとデータとして見える化し、トラッキングしていく仕組みは早々に構築します。トラック事業者からの値上げの交渉に対しては、交渉のテーブルにつき、基本的には適正に応じるスタンスです。これからはたとえ運賃をたくさん払っても運べなくなる時代が来るという危機感を、ワコールグループ内で共有していきたいと思います。

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