カーゴニュース 2025年10月16日 第5379号

CLOに訊く volvol.2
「部門最適」から「全体最適」の物流へ
SUBARU
執行役員CLO物流本部長
村田眞一 氏

物流の視点を経営判断に反映させていく

2025/10/15 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 インタビュー

物流の視点で全体最適を見据えた解決策を提言

 

 ――CLOの役割についてお聞きしたいと思います。CLOにご就任されるまでのキャリアについて少しご紹介いただけますか。

 

 村田 実は物流専任の仕事は今回が初めてです。入社後、工場の生産管理、国内販売店(出向)、管理部門などを経験し、30代には広報を長く務めました。その後、経営企画や人事にも携わりました。入社してすぐの生産管理では物流との接点がありましたし、経営企画にいた2011年に東日本大震災が起きた時は、物流の寸断により「モノが入って来ない」「モノが運べない」といった物流にかかわる各種トラブルシューティングを経験しました。

 

 ――「物流本部」が新設された同じタイミングでCLOが設置されたことの意義についてはどのようにお考えですか。

 

 村田 各部門に物流機能がぶらさがっている組織体制では、物流を軸として事業を回していくという考え方が生まれにくかったのではないかと思います。社内で物流がクローズアップされるのは、先ほど申し上げたような「モノが入って来ない」といったトラブルの時です。

 「物流本部」ができ、担当役員が配置されたことで、トラブル時だけでなく平時から各部門を管掌する役員とコミュニケーションを取り、物流の視点で全体最適を見据えた解決策を提言し、経営判断に反映させていく役割が求められています。各部門で物流を担当していた社員は、物流が「本部」に格上げされ役員や部長との距離が近くなり、物流の立場から意見を言える機会が増えることを歓迎している声もありました。

 

 ――物流が経営戦略としてとらえられるようになり、その責任者である「CLO」に対する期待も大きいと思います。

 

 村田 当社のような製造業にとって物流とは、製品をつくり、お客様のもとへ届けるために必要不可欠な基盤となる機能です。「モノが届く」ことが当たり前ではなくなりつつある中で、供給を支えるための戦術・戦略について思考を巡らせ、経営の土俵の上にテーマとして上げ、議論することの重要性が増しています。新しいチャレンジを託されたことにやりがい感じますし、プレッシャーももちろんあります。

 

ドライバーの荷降ろし、SUBARU側で引き取りも

 

 ――具体的な物流効率化の取り組みをご紹介いただけますか。

 

 村田 通常、製造工場にトラックで輸送される部品の荷降ろしは、お取引様と運送会社の契約に基づき、ドライバーが行うケースが多いです。昨年、ハイブリッド車の基幹ユニットであるトランスアクスルの生産工場として稼働した北本工場(埼玉県北本市)では、ドライバーではなく、SUBARUのスタッフが荷降ろしする体制としました。荷降ろし作業がなくなることでドライバーの拘束時間を短縮することができます。運送会社ではドライバーの確保が課題となっており、フォークリフトの資格を持っているドライバーを確保するとなると採用のハードルはさらに上がります。SUBARU側で荷降ろしを行えば、フォークリフトの資格は不要となるため、運送会社は採用の幅を広げることができます。この取り組みは日本自動車工業会でも注目され、実際にオペレーションを企画したスタッフが取り組み内容を説明させていただきました。

 

 デポを活用した取り組みも始めています。お取引様からの部品を工場直納ではなく、いったんデポで受け入れ、デポから工場へはトラックの積載率を高めて納入し、トラックの使用台数を減らすスキームをトライアル中です。これにより製造工場構内の混雑が解消し、混雑から誘引される事故の削減にも寄与します。こうした取り組みは新設する工場から取り入れていく方針です。

 

 ――共同物流やモーダルシフトの取り組みについてはいかがですか。

 

 村田 自動車メーカーはお取引様と個々に契約しており、1社単独でもそれなりの物量があり、工場に納入される部品は相応の大きさがあるものも多いため、トラックの空きスペースを互いに融通するというのは難しいという事情はあります。

 

 当社の製造工場は群馬県にあり、お取引様も北関東に集中しているのですが、新たに九州地区から少量の部品の輸送が必要となった際には大手物流会社の幹線便を活用するなど物量や地域に応じた最適な輸送方法を検討しています。鉄道輸送へのモーダルシフトも含めた複数の選択肢を視野に入れて柔軟に検討を進めています。

1 2 3
続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。
第一倉庫株式会社 日本通運 uprのピーアール。 鉄道貨物協会 第一工業株式会社 アライプロバンス ジェイエスキューブ プロテクティブスニーカー協会 建荷協 富士物流のホームページにニュースを提供中!! 日通NECロジスティクス提供 物流用語集