カーゴニュース 2026年1月6日 第5400号
A CLOの話題に移ろうか。今年4月からは改正物流法の第2弾として、一定規模以上の荷主(特定荷主、特定連鎖化事業者)に対し、物流統括管理者(CLO=Chief Logistics Officer)の選任が義務付けられる。CLOは、物流業務全体を統括し社内外との調整を図り、効率化や適正化、持続可能な物流を実現するための「最高責任者」という位置付けだ。物流事業者に物流を丸投げするのではなく、荷主に明確な責任を持たせる意味合いがある。CLOの役割は、経営視点からの物流戦略の策定のほか、物流事業者とのパートナーシップにおいても重要な責任を担うことになる。
B CLOを選任・配置する意義は、物流に対して影響力のある大手荷主企業の経営層を中長期的な物流改善にコミットさせることにあると思っている。将来的には、調達や購買などグローバル物流も含めたサプライチェーン全体を統括する「チーフサプライチェーンオフィサー(CSCO=Chief Supply Chain Officer、最高サプライチェーン責任者)」に進化していくことが期待されているのではないか。
一方で、CLOが法律によって「重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任される必要がある」と定められたことは、国が民間企業の経営判断に踏み込みすぎているような印象を受ける。いわゆる「○○担当役員を必ず置きなさい」と法律で規定するのはかなり珍しいケースだと思う。組織や役職の配置は企業のビジョンや経営戦略を実現するための重要な要素であり、本来企業側の専権事項だ。「特定荷主」に指定されれば、役員に「物流枠」を確保しなければならず、国が民間企業の判断領域にそこまで踏み込むべきなのか。
F その点はたしかに疑問なしとは言えないね。会社法は企業の目的を定款に記すことを義務化しているが、物流業務を管掌する役員を置くべしとは定めてはいないからね。
B また、改正物流効率化法における「特定荷主」という概念や、中長期での物流改善計画の策定義務化については省エネ法を参考にしたといわれている。省エネ法の「エネルギー管理統括者」は同一グループ内企業での兼任が認められている。経団連(日本経済団体連合会)では、CLOについても同一グループ内で兼任が認められるべきだと要望しており、むしろその方が、グループ企業が連携して物流改善に取り組むことができ、効果が上がるのではないかという考え方には一定の説得力がある。
今後の課題としては、CLO人材の育成が挙げられる。CLOを支援するサービスは各方面から続々と登場しているが、現時点では法律理解の促進や他企業CLOとの交流、ネットワークづくりにとどまっているような印象がある。役員クラスが望ましいとされていることからも、スキルマトリクス評価の判断基準となる資格や評価試験があってもいいのではないか。例えば企業の財務責任者向けには日本CFO協会という団体が経理・財務に必要な知識・スキルのレベルを可視化する検定を実施している。CLOについても知識やスキルに関する評価試験を取り入れるというのもひとつのアイデアだ。将来的にはCLOを戦略的に社外から登用するような動きも出てくると思うが、「物流担当役員」にふさわしい、経営や物流に関するスキルを持った人物なのかを判断する基準としても活用できるのではないか。
D たしかにCLO選任にあたっては客観的な判断基準も有効だから「CLO検定」というのはいいアイデアかもしれない。JILS(日本ロジスティクスシステム協会)やフィジカルインターネットセンター(JPIC)はおそらくそうした構想を持っているのではないか。ただ、検定となるとある種「権威」がないといけない。具体的には経産省など所管省庁の〝お墨付き〟を得なければ、検定や資格としてあまり価値がない。そういう意味では導入のハードルが高いだろうね。
ところで、CLOの選任義務化が企業人事に踏み込みすぎという指摘だけど、民間企業の役員の選任については株主総会の重要な決定事項のひとつだ。また、取締役は自社の利益を最大化し、自身や第三者の利益より優先しなければならず、個社最適を追求するのが取締役の義務だと言える。ただ、CLOのミッションは短期的に自社の利益につながらない経営判断をしなければならない局面も想定される。それもあってか行政の担当者は「CLOは本来ならば取締役レベル」とか「できれば執行役員以上が望ましい」などやや表現を曖昧にしている。
経団連が要望したように、CLOについて、グループ内兼任が認められた方が効果的かもしれないが、今のところ事業会社ごとに選任すべきだという行政の方針に変更はないようだ。今後の判断のゆくえに注目したい。
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