カーゴニュース 2026年1月6日 第5400号
企業内でCLOと物流部長の立ち位置は…
F 外部からCLOをヘッドハンティングするような動きも出てくるのではないか。あるいは、物流についてあまり詳しくない役員を形式的にCLOに選任し、物流のプロフェッショナル人材を外部から招き、CLOをサポートするアドバイザーとしての役割を担わせる――といったことも考えられるね。
B 大手物流会社の役員経験者が、荷主メーカーのCLOとして抜擢されるようなケースもこれから出てきそうだ。経営と物流の両方の知識と経験を備えた貴重な人材だからね。
D そういえば、実際に大手企業グループの物流子会社の社長を務めた人が、退任して小売業に物流担当として入社したという話も聞いている。まさにCLO候補ではないかという気がするな。
A 物流子会社の社長は親会社のCLOにはなれないルールになっている。親会社役員相当の役職を兼任している場合は可能だが…。
C 人材スカウト会社もCLO人材のニーズに注目しているのではないかな。物流企業の役員の中には、すでにそうしたスカウト会社に登録している人がいるかもしれない。ただ、外部人材がCLOという役職にすぐにフィットするかどうかについては疑問がある。CLOが担当する領域はサプライチェーン全体にまたがっており、関係する部門も多岐にわたる。外部からアサインされた人材がいきなりその調整役を担うのは難しいのではないだろうか。部門間の調整には、その会社の事情に通じていることや、社内での長年の人間関係の構築も求められる。CLO人材のスカウトやマッチングが一時期流行ったとしても、それが定着し、中長期的な物流改善に結び付くのか、今後の注目点のひとつだと思う。
もうひとつ疑問に感じているのは、従来の物流部長とCLOがどう違うのかという点。CLOと物流部長の役割分担をどうするかは、今後企業内で明確なラインを引かなくてはならない。たとえば、これまで物流部のおもな役割といえば「効率化」と「コスト削減」だった。メーカーにとっての物流はそれ自体が付加価値を生むというよりは「コスト」であり、物流コストを前年よりいかに削減するか、あるいはコスト上昇をいかに抑制するかを最大のミッションとしていた。これは企業という営利を目的とした組織である以上、避けられない任務となる。
他方、CLOはもう一段高い見地から、持続可能な物流を構築するために、トラック事業者をはじめとした物流パートナーと長期的に良好な関係を築くための戦略を描く役割を担う。そのため、局地的には物流部と施策の面で対立する場面も起こり得る。その点を荷主企業が十分に理解して組織の指揮系統などに落とし込んでいけるかが重要だと思う。そうでないと、いざCLOを選任しても意思統一がうまく回らず、CLOが組織内で孤立したり、逆に物流部長と同じような仕事をやっているというような状況が起きかねない。CLOという制度は、モデルケースと呼べるような成功事例が出てくるまでは、組織の中に定着して有効に機能するのに結構時間がかかるような気もしている。
D 具体的にCLOがまずやるべきことは物流効率化にかかわる中長期計画の策定だ。ただ、実際に細かな計画策定作業を行うのは、従来から物流業務を担当している物流部のスタッフになると思う。一方、物流の改善計画を会社としてステートメントするためには、生産や調達、販売、営業部門など物流部の権限領域を超えた合意が必要となる。CLOはこの合意形成を主導し、物流部門を含めた他の関係部門を調整して、計画の実効性を担保していく役割が期待されている。そう考えるとCLOは外部からの登用よりもプロパーの人材が適任で、その方が機能しやすいのではないかと思う。仮にCLOに物流専門の経験がなくても、物流部や場合によっては外部から招いたエキスパートが支えることで上手く回っていくのではないかな。
F 一般論として、荷主企業ではこれまで、営業や販売、生産部門の権限が相対的に強く、物流にしわ寄せが来やすい構造があった。企業における物流の地位を向上させ、物流目線でサプライチェーンを改革していけるような組織体制にする――。これこそがCLO制度が目指すところではないか。しかし、その実現には5年、10年という時間がかかることが避けられない。企業はCLOを選任し、法律の要求事項をクリアしながら、それぞれの企業の中でCLOというポストを、いかに自社の企業価値向上につなげていくかを考えていく必要がある。さらに言えば、CLOというポストにふさわしい、サプライチェーン人材やロジスティクス人材の育成にまでつなげることができれば、本当の意味でCLOが活きる制度になるのではないか。せっかく画期的な制度が立ち上がったのだから、法律面での辻褄合わせだけではもったいない。
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