トラック適正化二法の施行スケジュール

カーゴニュース 2026年1月6日 第5400号

「トラック適正化二法」特集

テーマ④トラック適正化二法
適正原価と許可更新制の〝アメ〟と〝ムチ〟

2026/01/05 16:00
全文公開記事 FOCUS 行政

「適正原価」、違反をどこまで追い切れる?

 

 D 「適正原価」は〝継続的に〟それを下回ってはならないとするが、〝断続的〟に下回る運賃で受注するトラック事業者までは追いきれないだろう。また、「適正原価」を下回る価格で発注している荷主すべてを国交省が監視することはさすがに不可能だ。「トラック・物流Gメン」の数も地方トラック協会に所属するGメン調査員166人を加えても総勢約360人規模に過ぎない。Gメンでなくてもトラック関係を担当する地方運輸局の職員は慢性的に人手不足だ。

 

 

 F 「適正原価」という考え方自体は、実質的には下限運賃を規定する意味合いがあるから、トラック事業者にとっては素晴らしいアイデアだと思う一方、さっきから再三言われているように、実効性の面ではなかなか大変そうだ。実勢運賃アップに国がどこまで寄与できるのか。その本質的な是非を含めて本気度が試されると思う。

 

 許可更新制について他業界の先行事例を見ると。自動車運送事業の分野では、16年に起きた軽井沢スキーバス転落事故を契機として、貸切バス業界で17年4月から許可更新制が導入された。その結果、5200者の事業者のうち870者が更新できないなど、一定のふるいの効果が見られた。しかし、約5000者の貸切バス業界とトラック業界とでは規模が段違いであり、やはり実効性をいかに担保するかが大きな課題になる。

標準的運賃と適正原価の違い

 A ただ、貸切バスの場合、初回更新時に休眠会社が更新しなかっただけで、実質的な〝ふるい〟ができたのかどうか議論のあるところだとも聞く。

 

  トラックの労働組合関係者は「肌感覚だが、事業許可更新制を導入すれば、将来的に事業者数は6万者から4万者に減るのでは」と語っていた。

 

 C トラック業界では近年、人手不足倒産が増えている。ドライバーを確保できない会社の自然淘汰が進むほか、後継者難などによる自主廃業やM&Aもこの5年10年で増えていくだろう。さらに、現時点で事実上休眠状態の会社もあるため、実際稼働している会社は5万者程度ではないか。そう考えると、10年後に4万者程度まで事業者数が減少するイメージはできなくもない。

 

  事業者数がなかなか減らない理由のひとつに、新規参入も増えていることが挙げられる。それだけ参入ハードルが低いということでもある。昨今、運賃も上昇基調にあるため、異業種からの新規参入が増えてくる可能性も考えられる。

 

  参入と退出の新陳代謝が活発なのが健全な業界の姿だが、これまでは退出が少なく、参入ばかりが増えていたため、どんどん事業者数が増加していった歴史がある。

 

  新規参入で見逃せないのが、自動運転トラック事業者だね。彼らは自動運転トラックの開発者であると同時に輸送サービスプロバイダーでもある。今後は緑ナンバートラックの業界に、自動運転トラック事業者も新たなプレイヤーとして加わってくる。こうした新しい業態をトラック適正化二法でカバーできるのか、あるいはまったく想定していないのか…。今後の制度づくりの注目ポイントのひとつだ。

 

 

行政処分件数ランキング(アラームボックス調査より)

  ところで、トラック適正化二法の趣旨はドライバーの処遇改善であり、トラック業者が「適正原価」を収受して、ドライバーに還元されているのか、処遇の改善につながったのか、トラック事業者はもっと「見える化」すべきだ。行政に開示すべきということではなく、処遇改善費用を〝上乗せ〟して運賃を払っている荷主に対しては、少なくとも開示したほうがいいと思う。 

 

 国としてもドライバーの処遇改善にもっと積極的に関与すべきだ。その際、建設業界の動きが参考になる。国交省は建設業界で働いている労働者が賃金に不満を持っている場合に通報できる制度を27年度から運用開始し、通報内容を「建設Gメン」と共有して、事業者側を調査するという。同じような制度をトラック運送業に対しても作ったらどうだろうか。「適正原価」を収受したにも関わらず、ドライバーの処遇改善を行わない事業者を「トラック・物流Gメン」が調査するというスキームで運用できるのではないか。「トラック・物流Gメン」は荷主や元請事業者を取り締まる機能ばかりフォーカスされているが、不適正な事業運営を行うトラック事業者も取り締まる機能を持たせるべきだ。

営自格差が生まれる?

 そうした取り締まりは本来、都道府県トラック協会の適正化実施機関がやるべきことだよね。しかし「身内」であるため、どこまで厳格な取り締まりが行えるのか――。6万者の事業者数に対し、適正化指導員の数が足りていないように思う。事業許可更新の事務を担うために新たに設立される独立行政法人が、そうした機能を持つことになるのか…。

 

 ちなみにトラック適正化二法が公布されたのは25年6月だけど、公布から3年以内、つまり28年5月までに許可更新制度を開始せよと明記されている。制度がスタートして2年間は経過措置が認められているから、最長のスケジュールを想定するなら許可更新制度は30年5月までに開始することになる。つまり、今後4年間でしっかり体制をつくらなければならないわけだね。とはいえ、制度を運用する独立行政法人がどういう形のものになるのか、数が多い事業者の更新審査を本当に独法だけで対応できるのか――行政サイドもまだまだ手探り状態なのかもしれない。

 

 C 許可更新制は基本、書類をベースに効率的に審査していくことになるのだろうが、本当に書類だけで事業者の生殺与奪を決められるものだろうか…。結局のところ、運輸局による監査が必要になるということになれば、とてもではないが現在の人員では処理できないと思う。                 

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