上屋棟1棟と物流棟2棟で構成

カーゴニュース 2026年3月31日 第5423号

FOCUS
ヒューリック/JAL
「WING NRT」29年度稼働へ開発進む

上屋×物流施設で迅速な輸出を実現

2026/03/30 17:00
全文公開記事 倉庫・物流施設 航空 グローバル物流

運営会社を共同設立へ、テナントに高付加価値を提供

 

 街区全体の運営については、JALとヒューリックの共同出資のもと、専門の運営会社を26年中に設立する予定。企業の規模や具体的なオペレーションなどの詳細は今後検討していく方針とし、長塚氏は「空港内拠点と同等の機能を備えた施設であるため、従来の不動産管理だけでなく、航空物流に関するノウハウも必要。JALとの共同運営により、施設管理だけでなく物流オペレーションの面からも、街区全体を管理することができる。セキュリティ管理やインフラ供給に加え、『WING NRT』ならではのシナジー創出を追求するための仕組み作りなど、サービスに付加価値をつけられるような取り組みについても今後検討していく」と説明する。具体的には、集荷用のシャトル便の運行や物流棟での荷役といった街区内での物流業務について、物流事業者への委託などを通じて、テナント企業をサポートしていく。

 

 成田空港では貨物の搬入出におけるトラックの長時間待機の常態化が課題となっているが、「WING NRT」ではこの問題にも対応する。梅原氏は「多くの車両が接車できるよう、トラックバースは従来の3倍を整備するほか、上屋棟の自動化を進めることで時間通りの入出庫が可能となり、荷待ちをほぼ発生させない体制を構築できる」と強調する。

 

 また、労働快適性への配慮にも余念がない。従来の貨物上屋はランプに面しており、出入りに伴いシャッターを開放する必要があることから、夏は熱風が、冬は寒風が上屋内に入り込んでいた。一方、「WING NRT」の上屋棟は密閉型であり、建物内に空調設備を完備できるため、労働環境の整備により人材確保面の強化が期待できる。このほか、敷地内にワーカーや地域住民向けの店舗や託児所、クリニック、カフェテリアなどの施設を整備することで、労働快適性だけでなく地域住民との共生にも注力していく。

北千葉道路の全線開通で利便性が向上

滑走路整備後の物量増に対応、成田のハブ拠点化を支援

 

 成田空港では現在、「東アジアのハブ空港」への回帰を目指し、トランジット貨物(継越貨物)の取り込みに向けた施設の機能強化が進んでいる。近年、韓国・仁川国際空港といったアジアの主要国際空港が貨物ハブ拠点として成長するなかで、相対的に成田空港の存在感が弱まっていることが背景にある。「WING NRT」の開設を通じ、迅速な輸出オペレーションや傭車を不要とするコスト抑制などを武器に、トランジット需要の取り込みにもつなげる狙いだ。

 

 長塚氏は「国際航空貨物の重心点を東アジアの他の国々から日本へと移すという大きなビジョンのもと開発を進めている」と説明。梅原氏も「『WING NRT』のように国内に前例がない拠点は、荷主や航空会社から見て〝ゲームチェンジャー〟となりうる。荷主・フォワーダー・航空会社が三位一体となって同拠点を活用することが、成田空港をアジアのハブ空港へと回帰させ、ひいては国益にもつながってくる」と意気込む。

 

 「WING NRT」が開設を予定する29年度には、成田空港が現在整備を進めている第2滑走路の延伸および第3滑走路の新設完了が予定されている。成田空港では滑走路の整備により、航空貨物量が現行の190万t強から約300万tまで引き上がると見込んでいる。同空港におけるJALの取扱量は年間約67万tだが、滑走路供用後も現在の割合を維持し、年間で100万t以上の取り扱いを目指す。一方で梅原氏は「JALが扱っている既存顧客の貨物だけでなく、街区全体の貨物を取り扱えるようになるため、コスト競争力や業務品質で勝負することで、今よりも大きなシェアを獲得することも狙っている。デュアルハブ体制の構築による競争優位性は間違いなく出てくる」と事業成長に意欲を見せる。

広告や説明会などでテナント候補にアピール

現在のテナントのリーシング状況については、すでに多くの企業から問い合わせが届いているとし、今後は上屋と物流施設を一体運用する強みなどを幅広くアピールしていく。具体的には、広告によるPRに加え、荷主やフォワーダーなどを対象とした説明会や現地視察会を適宜行うことで、「WING NRT」の周知および拠点の魅力発信に力を注ぎ、テナントの誘致を進めたい考え。長塚氏は「当社とJALが描く将来像を伝える場を作ることで、より幅広い企業にアプローチしていく」と説明。また、梅原氏は「保管にも迅速な輸送にも対応しているため、とくにEC事業者やEC貨物を取り扱うインテグレーターなどは物流棟を利用するメリットが多い」と強調する。 

 

 なお、開発地は「地域未来投資促進法」の重点促進区域に指定されており、「WING NRT」のテナント企業は同法を活用することで、拠点内に導入する設備にかかる固定資産税の減免や建物賃借料に関する補助金等の優遇措置を受けることができる。「行政との連携が『WING NRT』が発展するための大きな追い風になる」(梅原氏)。

 

 また、「WING NRT」の稼働は、NAAと千葉県、成田市が推進する、成田空港を中心に周辺地域の発展を目指す「エアポートシティ構想」の先鞭をつけるプロジェクトになるという。JALとヒューリックでは、同拠点で新たに雇用する人数が数千人規模になると見通しており、周辺の主要駅からワーカー用のシャトルバスを運行するなど通勤利便性を確保。雇用創出によって地域の活性化・経済発展にも寄与していく考えだ。          

 

JAL梅原氏(左)とヒューリック長塚氏
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