カーゴニュース 2026年4月21日 第5429号

インタビュー
〝未曽有の物流危機〟にどのように対処したか
アサヒロジ 代表取締役社長
児玉徹夫氏

人材育成と知見の継承が「BCPの極意」

2026/04/20 17:00
全文公開記事 FOCUS 荷主・物流子会社 インタビュー 安全・BCP

「One Asahi」の理念で一致団結して対応

 

 ――システム障害が起きた3日後には出荷再開にこぎつけたのですね。迅速な対応に驚いています。


 児玉 それが可能となったのは、「One Asahi」という理念に基づき、アサヒグループジャパンの統制のもと各事業会社と当社が一致団結して事態に対応できたからだと考えています。アサヒグループの中に物流のことをよくわかっている人材が各所にいたことも大きいと思います。そのおかげでシステム障害の翌日に物流BCP方針を立案でき、その時点で可能な業務フローを策定できました。加えて、暫定的な受注・出荷システムを迅速に立ち上げる運営力が重なりました。そして最も大きな要因は、流通サイドのお客様のご理解とご協力です。事業会社の営業担当者が当面のBCP方針を踏まえ、物流にイレギュラーな負荷をかけないよう流通サイドのお客様に丁寧に事情を説明し、お客様からは「アサヒはシステム障害という未曽有の事態に陥っているのだから、我々もできるだけ協力する」と言っていただきました。大変ありがたいことだと感謝しています。

 

 ――流通サイドの理解と協力を得られたのは大きかったですね。


 児玉 その通りです。当面のBCP方針は、お客様にとってはかなりハードなものでした。パレット単位や大型トラック単位での発注をお願いしたほか、リードタイム・納品時刻についても従来のルールとは異なる対応を認めていただきました。これらの厳しい要件を受け入れていただけたことで物流をパンクさせないことができました。

 

 ――とは言え、出荷量は相当落ち込んだのではないですか。


 児玉 翌10月の出荷量は通常時の8割となりました。その時点で活用できる出荷能力を最も有効に活用できる業務フローを実施したことで、何とか8割を維持できました。逆に言えば、供給力の2割が損なわれていたわけです。グループ内のほぼすべてのシステムが機能障害に陥り、当初はメールの受送信さえ不都合となりました。それでも不完全ながら出荷体制を維持できたのは、グループの力を結集して難局に立ち向かったからだと考えています。その時点での対応が満点だったとは言えないでしょうが、その時にできる限りのことをやれたと思います。これはアサヒグループをご支援いただいている流通関係の皆様の大きなご支援と、従来から信頼関係を構築できていたからなのだと考えています。また、物流パートナー会社の皆様にも大変なご協力をいただいたことでこの危機を乗り越えられたと考えています。
 
メッセージ発信でパートナー会社の不安を解消

 

 ――グループ全体の力を結集した成果ですね。システム障害発生後は、物流パートナーである協力運送会社や協力作業会社の方々は相当不安になったのではないですか。


 児玉 当社は相当の物量を動かしており、グループの貨物と外販を合わせ、全国に約80拠点を構えています。システム障害直後の段階は出荷対応を行う拠点を絞って運用していましたから、それ以外の拠点では一時的にモノが動かない状態になりました。これではパートナー会社の皆様も不安になってしまいます。そこで10月1日に協力運送会社と協力作業会社の皆様に当社からメッセージを発信しました。復旧までの間、一部の拠点で物流がストップする事態が生じても、最低限の補償を行うという内容です。後になってパートナー会社の皆様と直接お会いした際には多くの方から「あのメッセージがあったので不安を解消できた」とうかがいました。当社がすぐにメッセージを発信したことで、逆に信頼感が強まったのではないかと感じています。

 

 ――しっかりしたメッセージや情報共有が重要なのですね。


 児玉 復旧の過程で徐々に出荷拠点の稼働を増やしていきましたが、日々変化する状況において、事業会社各社から出てくる物流ニーズに対し、対応を判断・即決し、各拠点の責任者とは毎日オンライン会議を行いました。これにより全国の拠点の隅々まで、物流状況と対応方針を共有できました。復旧へのスピードアップや不安感の払しょくにも効果があったと考えています。この間もシステムの復旧に注力し、12月上旬には概ねシステムが回復しました。

 

 ――まるまる2ヵ月間、暫定システムで物流を維持してきました。

 

 児玉 システム自体は10月中に再稼働できることを確認しましたが、基幹システムと各拠点の物流システムを連携させる作業や、暫定システムを動かしていた間の出荷・在庫データなどを、復旧したシステムに移し替えるなどの作業が必要でした。それらが終わって完全復旧できたのが12月上旬でした。倉庫管理システムが復旧するまでの2ヵ月の間ですが、それぞれの拠点ごとに様々な工夫を凝らして対応を図っていました。たとえばある拠点では、パソコンを使ってエクセルでマクロ(簡易プログラム)を組んで自動処理を行えるようにした例があります。また、若手社員と中堅社員が力を合わせ、簡易AIを使って本式のWMSに近い機能を持った出荷システムをつくりあげた拠点もありました。システム障害という未曽有の危機があったおかげで当社の社員の潜在能力の高さを再確認できた思いです。

復旧後は暫定システム稼働時のデータ照合を実施
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