カーゴニュース 2025年3月13日 第5323号
ANAグループは高まる航空輸送需要の取り込みに向けた事業戦略を推進し、航空貨物の「グローバルトップ5」の実現を目指す。昨年は成田国際空港の北部貨物地区に同社最大規模となる貨物エリア「ANA Cargo Base+(エーエヌエーカーゴベースプラス)」を開設し、上屋集約と自動搬送機器導入による業務効率化を実現した。グループの航空貨物事業を手がけるANA Cargoの脇谷謙一社長に、2024年度業績の振り返りと今後の事業戦略について聞いた。 (インタビュアー/松浦優樹)
中国発ECで業績は〝過去最高レベル〟
――24年度は中期経営戦略(23~25年度)の折り返しの年でした。まずは1年間の貨物動向についてお聞かせください。
脇谷 ANAHDの貨物事業における24年度の第1四半期(4~6月)は、23年度がコロナ禍での特需の反動によって貨物量が減少したことに加え、様々な仕向け先で在庫が積み上がっていたこともあり、荷量の増加を想定しない計画を組んでいました。
しかし、実際の荷動きをみると、23年の年末あたりから中国発のEC貨物の荷動きが増加基調に入り、年が明けた3月以降、その傾向に拍車がかかりました。そのため、第2四半期からは業績が回復し始め、夏頃には北米向けの貨物スペースがタイトになり、載せきれない貨物も出始めるようになりました。
下半期に入ると、スペースの逼迫を背景に、お客様にご理解をいただきながら、日本も含むアジア発などで運賃を値上げさせていただきました。その成果もあり、第3四半期累計での貨物郵便事業の業績は売上高1665億円、国際航空貨物取扱量は53万2000tとなり、異例の好調だったコロナ禍での業績を除けば過去最高レベルとなっています。このほか、日本発中国向けの半導体製造装置もほぼ毎日輸出があるほど活発で、商材が高単価なこともあり、収入を押し上げました。
――スペースのひっ迫を補うためにどのような施策を進めていましたか。
脇谷 当社では旅客機のベリースペースの活用に加え、大型機2機・中型機6機を含む自社貨物機を運用していますが、これだけではカバーしきれないほどの輸送需要が生じています。そのため、昨年8月から成田~シカゴ間で、米国のWestern Global Airlines社の貨物専用機1機を長期チャーターしてスペース不足を補っています。それでも輸送需要には十分に応えきれていませんが、とても良いタイミングでチャーターすることができたと思っています。
その一方、発注済みの新造機の納入が遅れていることもあり、当面は増便が難しく、現在確保しているキャパシティを最大限活かした輸送計画を立てていく必要があります。
――25年の荷動き見通しについて教えてください。
脇谷 米トランプ大統領が中国発の貨物に対して25%の関税をかけることを決定していますが、米国向けEC貨物に関しては価格転嫁が起こっても輸送需要は衰えないと見ており、荷動きにあまり大きな影響はないと考えています。
半導体製造装置に関しては、北海道でラピダスの工場稼働が控えていることから、輸入面での荷動きが期待できるため、さらなる物量の増加を見込んでいます。とくにAI向けの半導体はニーズが高く、この需要はしばらく衰えることはないだろうと考えています。また、自動車についても生産の回復が見込まれており、荷動きが活発になると思われます。ですが、保有しているキャパシティを増やすことが難しく、スペースの逼迫により需要を十分に取り込むのは難しいというのが今年の見立てです。
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