カーゴニュース 2025年9月18日 第5372号
7月1日付で国土交通事務次官に就任した水嶋智氏(写真)は12日に専門紙記者会見を開き、社会インフラである物流を持続可能なものとするため、荷主をはじめとするサプライチェーン全体の関係者が必要なコスト負担を行うなど配慮する必要があると指摘した。
水嶋氏は「今さら言うまでもなく物流は経済発展と国民生活を担う重要な社会インフラであり、人体で例えれば血液に相当するものだ。それほど重要な物流だが、大きな課題に直面しており、持続可能性に関して不安が生じている。長年のドライバー不足に加え、2024年4月からの労働時間規制の厳格化によってトラック輸送力が不足するという物流の『2024年問題』への対応が焦眉の急となった。社会においても物流が注目され、その重要性への認識が深まっており、2024年にとどまらず、その先の2030年においても輸送力不足が生じる可能性についての認識が広まってきている。そうした機運をしっかりと受け止め、政府としても実効性の高い施策を打つことで課題に対処していく」と述べた。また、「物流の『2024年問題』ということをもって、2024年だけで問題は終わりなのかと言えば、もちろんそうではない。24年の1年間はなんとかクリアし、この問題によって日本経済が大きなダメージを受けるような事態は発生しなかった。ただ、中期的に考えれば問題は依然として目前にあり、解決済みになったわけではない。トラック運送業界では現役のドライバーの高齢化が進む一方、入職する若い方々が少ないという状況は変わっておらず、依然として物流の担い手であるドライバーの確保が大きな課題となっている」と指摘した。
今後の対応策について、個々の企業努力で急激にドライバーの数が増えることはないとして「ひとつには新技術を活用することと、長時間の待機や荷役時間の削減を図るなど、労働生産性を高めることで、輸送力を少しでも向上させることが重要。そのうえで、ドライバーの人数をどのように増やすかが問題だ」と強調。運送業界を「賃金が高く、働きやすい魅力的な職場とすることで、若い方の入職を促進しなくてはならない。賃金アップには運賃の引き上げが必要で、荷主をはじめとするサプライチェーン全体の関係者がドライバーの賃金引き上げにつながるよう運賃・料金のアップを行うこと。加えて待機や荷役を削減することで労働生産性向上につなげることが不可欠だ」と方向性を示し、その場合は「現状よりも輸送コストが増加することになるが、サプライチェーン全体の理解と協力に基づき、納得のいく形で費用負担を行っていくべきだ」と訴えた。
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