カーゴニュース 2025年9月30日 第5374号
NTTロジスコ(本社・東京都中央区、中江康二社長)の物流市場における存在感が高まっている。NTTグループの技術力を背景としたソリューション能力と高い現場運営力を武器に、新規受託案件を獲得し、業容を順調に拡大している。中江社長に、自社の強みを具現化する「3・5PL」事業モデルを核にした事業戦略、今後の成長ビジョンなどについて聞いた。
(インタビュアー/西村旦)
「3・5PL」でSC全体の最適化を支援
――昨年から、自社のアイデンティティを表す新たな概念として「3・5PL」を標榜しています。
中江 お客様のサプライチェーン(SC)の最適化提案や物流戦略の策定機能を担う4PLと、高品質かつ生産性の高い物流運営機能を示す3PLという2つの事業概念をかけ合わせたものですが、当社独自の事業スタイルや強みを正確にモデル化できている言葉だと思っています。単なる3PLの受託・運営だけにとどまらず、コンサルティング業務を通じてSC全体を俯瞰して最適化するとともに、付加価値の高いソリューションを提案していくという考え方です。
当社はもともと「NTT」というブランドを社名に冠している通り、ICT(情報通信)やAIに強みを持っており、物流センターをはじめとする物流現場の運営力に加えて、デジタルを活用したコンサルティング提案力で高い競争力がありました。それを「3・5PL」という言葉を使ってあらためて定義したことで、当社本来の強みをより明確に打ち出せるようになりました。社員にとっても肚落ちしたというか、気持ちに響くものがあったようで、日々の営業活動などにおいても、よりソリューション提案を意識した動き方が浸透してきており、手応えを感じています。
――確かに、NTTロジスコの強みを簡潔に表現できていると思います。
中江 単なる3PLだけであれば、どうしても価格競争に巻き込まれやすくなります。もちろん価格面でも競争力があることは大事ですが、それだけでなく、お客様に〝ささる〟付加価値の高い提案をすることが重要です。最近はお客様から「NTTロジスコは改善ポイントを見つけるだけではなく、それを実行に移す力がある」と評価していただけることが増えてきました。この実行に移す力こそが「3・5PL」です。4PLでは改善プランやコンセプトを示すことはできても、実行については物流事業者まかせになってしまいます。当社の場合は、コンサル業務から改善提案、物流現場の運営まで一貫して自分たちでやっているため、改善プランを確実に現場に落とし込むことができるのが最大の強みです。
――今年2月に「SCMコンサルティング室」を新設しました。
中江 コンサルティング営業推進プロジェクトチームを正式な部署に格上げしたものですが、ここが「3・5PL」の中核組織となっています。お客様に営業に伺う際も、室のメンバーが営業マンに同行して在庫最適化の提案などを行っており、新規受注の獲得や既存顧客における受託領域の拡大につながっています。
SCMコンサルティング室が目指す方向性は、「単にコストを下げるのではなく、在庫の持ち方や発注・輸配送の頻度を最適化することでSC全体を効率化する」というものです。モノの流れをよりスリムに整流化していくことで、結果としてSCトータルでのコストを最小化していくというアプローチです。現在の物流を取り巻く環境を見ると、人件費をはじめとする諸コストが上昇を続けており、単価を下げることはほぼ不可能です。そこで一定の単価上昇は許容しつつ、SC全体を最適化することでトータルコストを抑制するという我々の手法がお客様から評価されていると考えています。
例えば、当社が開発した「スマートエスアール(店舗在庫再配分)」サービスは、店舗や地域ごとに異なる売れ筋商品によって発生する店舗間での商品転送を、販売データを解析することによって抑制していくものです。これによって、店舗間での転送コストを削減するとともに、販売機会の損失を回避することで売上増加に貢献していきます。当初はエンターテインメントグッズのお客様向けに導入していましたが、今回、靴販売事業者向けに一般サービスとして展開していくことになりました。
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