カーゴニュース 2026年3月3日 第5415号
物流会社の経営者は資本市場に向き合っていない
――物流業界ではいま、投資家やアクティビストからのプレッシャーもあってMBO(経営陣による自社買収)による上場廃止が増えているほか、不動産売却などによる資本効率経営が加速化しています。ある意味、SBSグループが志向してきたビジネスモデルに時代が追いついてきたとも言えます。
鎌田 そもそも歴史の長い大手物流会社の多くは「家賃」を払うという感覚が希薄です。昭和の時代に買って減価償却が終わった倉庫や配送ターミナルをタダ同然で使い、お客に安く貸すことで商売を成り立たせてきました。償却済みの土地の資産はBS(貸借対照表)の左側(資産の部)に安い簿価で載っているだけで、右側(負債の部)には来ませんので、そうした経営が可能になるわけです。しかし、本来から言えば、高い価値を持っている資産を安く貸していること自体が経営として健全ではありません。アクティビストはそういうことが分かっているので、資産を有効に使っていない会社に狙いを定めて株を買い占めている。それがいま、物流業界で起きていることです。
これに対し、SBSグループの場合は、土地や物流センターをすべて流動化し、家賃を払って生計を立てる仕組みで最初からやってきました。我々には土地や倉庫を保有して、償却が終わったら儲かるというような発想はまったくありません。
――アクティビストから狙われた物流会社がMBOによって株式を非公開化する事例が増えています。
鎌田 アクティビストに株式を買い占められた会社は、経営権を奪われるのを避けるためにMBOで株式の非公開化に動きます。しかし、オーナーの株式保有比率が低い場合は、ファンドに協力を仰ぐことになります。そうするとファンドは例えば、エクイティ(自己資金)が1割くらいで、残りの9割を金融機関からのデット(借入金)で会社を買います。その後、会社の土地などの資産を売って借金を返済し、自分たちのエクイティを増やしていき、IRR(内部収益率)を30%くらいの高い率で回していきます。つまり、ファンドは少ない自己資金で大きな利益を得るという、ある意味でむちゃくちゃなビジネスをやっているわけです。
そうしたことを物流会社の経営者が分かっておらず、投資家からの強い圧力を恐れるあまりファンドに助けを求め、その結果として資産を持っていかれてしまう。仮に再上場しても、資産を抜かれた状態で、また投資家からのプレッシャーを受ける元の状態に戻ってしまうだけです。そうしたことがいま、物流業界のあちこちで起きています。
――そうすると、オーナーが株を大量に保有していることが大事になってきますね。
鎌田 だから私は持株比率にこだわっているわけです。現在、49・9%を保有しているので狙われることはありません。拒否権を行使できる株式比率を持っていればアクティビストが狙うことはないでしょう。
結局のところ、経営者の多くが資本政策を理解しておらず、資本市場としっかり向き合っていないことが問題です。いたずらに増資に頼って株をばらけさせてしまい、それをアクティビストに買われて揺さぶりをかけられるような事態が起きています。
また、不動産を売却してキャッシュ化することで、いったんは赤字になっても黒字に反転させる力があればファンドは狙ってきません。不動産を売却すれば家賃を払わなければならないために業績は一時的に悪化しますが、それを元に戻していく経営力こそが必要です。SBSグループは不動産を必ず売却し、それをリースバックして家賃を払いながら黒字を出す経営を長年にわたって続けています。
――物流に適した土地を入手して物流施設を建設し、そこに顧客を誘致したうえで施設を流動化するという独自の一貫スキームがSBSグループの強みです。近年の土地価格の上昇などにより、そのサイクルが変調をきたすリスクはあるのでしょうか。
鎌田 まず土地については市街化調整区域の土地しか買いませんので、値上がりすることはありません。これまでと状況が違うのは建築コストだけです。坪単価40万円程度だった建築コストが70~80万円までに上昇しているため、これまで坪当たり3500円程度だった家賃を4000円くらいまで上げないとコスト上昇分を相殺できない計算になります。ただ、今後の物流コストの上昇トレンドから考えても、数百円程度の家賃アップは吸収できる範囲内にあり、従ってこのビジネスモデルはまだまだ継続できると判断しています。
鎌田 正彦(かまた・まさひこ) 1959年6月22日生まれ。宮崎県出身。延岡高校卒業後、79年に佐川急便入社。87年、前身となる関東即配(現SBSホールディングス)を設立。2003年ジャスダック上場。12年に東証2部に上場し、翌13年に東証1部上場。22年にプライム市場に移行。65歳
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