カーゴニュース 2026年3月5日 第5416号

インタビュー
国内で生み出したキャッシュを海外成長投資へ
NIPPON EXPRESSホールディングス
専務執行役員CFO 経営戦略本部長
大槻秀史 氏

資本効率経営で企業価値向上を加速

2026/03/04 17:00
全文公開記事 総合物流・3PL 経営計画・戦略 インタビュー

 NIPPON EXPRESSホールディングス(本社・東京都千代田区、掘切智社長)が企業価値の向上に向けた取り組みを加速させている。従来の「含み益」に依存した経営と決別し、低収益不動産の売却による成長投資や事業ポートフォリオの再構築など、資本効率を意識した経営に向けギアアップしている。大胆な戦略の舵取りを担う大槻秀史CFO(最高財務責任者)に狙いや取り組みの詳細を聞いた。(インタビュアー/西村旦)

 

企業価値向上に向けBS重視に転換

 

 ――ここにきて資本効率経営に大きく舵を切った背景や目的について教えてください。

 

 大槻 当社グループは、創立100周年を迎える2037年のありたい姿として、長期ビジョン「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」を定め、数値目標として売上収益4兆円、うち海外売上高比率50%(2兆円)、事業利益率5%超、ROE(自己資本利益率)10%超の達成を掲げています。

 

 また、24年度から28年度までの5年間を期間とする現行の経営計画では、長期ビジョン実現に向けたバックキャストとして、売上収益3兆円、うち海外売上高比率40%(1・2兆円)、事業利益率5%、ROE10%以上を数値目標として、「グローバル市場での事業成長の加速」「日本事業の再構築」「サステナビリティ経営の推進」の3点をグループ変革と成長を加速するための重要戦略に位置づけ、現在、具体的な取り組みを推進しています。

 

 そうしたなか、24年2月に現経営計画を公表した際に、「企業価値向上に向けた取り組み」を計画の中に織り込んだことが、NXグループが資本効率経営の取り組みに大きく舵を切った端緒となります。具体的には、東京証券取引所が前年の23年3月に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の要請に基づき、その対応策をまとめたものとなります。

 

 その当時の当社グループの状況を振り返ると、直近5年のROEが平均7・6%で、株主資本コスト8%を下回っており、その結果としてPBR(株価純資産倍率)も1倍を下回る状況が続いていました。その改善を当面の課題として、従来あまり意識してこなかったBS(バランスシート=貸借対照表)マネジメントの強化に取り組むことにしたわけです。

 ――東証がいわゆる「PBR1倍割れ」の解消を企業に求めたことが直接的な契機となったわけですね。

 

 大槻 そうです。これを受けて、24年度は解消に向けて取り組んだものの、経営環境が厳しさを増したこともあって業績は前年よりも悪化してしまい、このままでは経営計画最終年度の数値目標達成が難しいと判断しました。そこで、公表から1年が経過した25年2月に取り組み内容を大幅に見直し、従来とは異なるレベルでの取り組みと変革のギアアップを加速させることにしました。同時に経営計画の折り返しの年となる26年度に中間目標を設け、営業利益1000億円以上、ROE8%以上を掲げるとともに、PBR1倍割の解消を目指すこととしました。

 

 25年度が終了した段階での現状についてお話しすると、昨年後半に日本の株価全体が上昇したことと、現在取り組んでいる「企業価値向上に向けた取り組み」が一定の評価を受けたこともあって、年末の段階ではPBRはほぼ1倍になっています。しかし、営業利益などはまだまだ目標に届いていませんので、今期は中間目標の達成に向けて全力で取り組んでいきたいと考えています。

 

 ――日本企業に資本効率経営が求められている大きな背景には、グローバルの潮流があるということでしょうか。

 

 大槻 グローバルスタンダードがBSを重視する方向にシフトしているということです。また、日本株を買っている投資家の多くが海外投資家であり、投資家と同じレベルや目線での経営が必要になっているという背景もあります。かつては大半の日本企業がPL(損益計算書)重視の経営を行っており、売上高や営業利益、経常利益などを重要経営指標にしていました。しかし、数年前からROEをはじめとする資本効率が急速に重視されるようになり、BSをしっかりコントロールしながら、PLとBSのバランスがとれた経営が求められるようになっています。

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